1015.冒涜的な進化
「またせ」
「ワン」
エルエさんとぽちが戻って来た。
何がどう変わったのかはよくわからないけどパワーアップしたっぽい。
それと、エルエさんがアインシュタイゼン博士用に、と三つのアイテムを持ってきてくれたのでアイテムボックスに入れておく。またアインシュタイゼン博士んとこ行くとき渡そう。
「シャー?」
「頭四つになっとる!?」
「どことなくだけどツチノコ、海っぽい感じになってない?」
言われてみれば体が青みがかってるような?
ツチノコさん、一体何して……え、ヒュドラから体の一部貰って進化した? シーサーペント?
な、なるほど、確かに言われてみれば海蛇っぽい感じに進化してるような?
ってかズメイの幼体だったのにシーサーペントになってよかったの?
「いや、それよりも、ヒュドラこの近くに居たの!?」
「ああ。ヒュドラというか、一階の方にハイドラは居るな」
いるんだ!?
ハイドラって確かダゴンさんの妻だっけ?
あれ? ヒュドラが妻だっけ?
「どっちもあるんだ。運営の采配次第だが、ほのぼのオンラインではハイドラを採用してるみたいだな」
知識量だと今回はフェノメノンマスクに一日の長があるな。
とりあえず、エルエさんとツチノコさんの進化は終わったみたいだし、海底都市でやるべきことは終わった感じかな?
あとこの近くにムー大陸が沈んでるらしいけど、そっちはまぁ、いいか。
さすがにそっちにまで移動するのは今日中じゃ無理だろうし。
「俺のやることは終わったけど。皆は?」
「俺ぁ付き添いみたいなもんだし、いつでも帰れるぞ?」
「僕も必要なモノは手に入れてるよ」
「ぽちの強化すんだし、村永さんのおかげで新しい古代遺跡の場所教えて貰ったわ」
「ムー大陸は行かんのか?」
「機会があれば、だな。今日は家に帰るよ。クティーラさんの紹介もあるし」
「ぬぅ……」
村永さんが何とも言えない顔をしてるが、すでに契約済みだからな。遠慮なく連れて行かせて貰うぜ。
安心しろよ、次に会う時は都会に行ってしまった彼女のように村永見てるーって現代知識武装したクティーラさんを見せてやんぜ。
「テインさんたちはどうよ?」
「私が強化されるようなことがあるとでも?」
ある種ティンダロスの最高位だもんなぁ。それ以上は強化されないかぁ。
「早く帰ろうぜー」
マイノグーラさんも飽きたご様子。
キマリスさんなんてぽちを相手に黄金の円盤をフリスビーみたいに投げて遊んでるし。
それ、クトゥルフの心臓だよキミ?
まぁいいや、じゃあスキュラさ……ああ、まだクトゥルフの肉食べるかどうか迷ってんのか。
「スキュラー。早くどっちにするか決めろよー」
「そうは言うけどマイノグーラ、これ食べるのも結構覚悟がいるのよ。どんな姿になるかわからないし。私すでにこんな容姿なんだからこれ以上おかしくなるとか、うぅぅ……」
「ま、帰るのは帰ろうか。スキュラさんはそれ持って一旦家に帰ろうぜ」
「そ、それもそうね」
「あ、それはダメよ。お父様の肉はルルイエだから問題ないけど、上に持って上がったら討伐対象になっちゃう」
「え、ヌトセさん来ちゃう感じ?」
「最悪家ごと消滅させられるんじゃないかな?」
酷すぎません? 俺の持ち家ですよ? 滅多に家として存在しないUFOですよ?
となると、もうここで決めちゃうしかない訳か。
でも、決意がいるってことは食べて強化されたいってことだよな……
俺はついマイノグーラさんを見る。
うん? とキョトン顔の彼女は、俺が手招きすると自分? と指さし、困惑顔で寄って来る。
そんな彼女に耳打ちする。
どう、可能かな? 俺が確認すると、意地の悪い顔で任せな。っと告げて来た。
じゃあ任せちゃおう。
うーんっと唸るスキュラさん。
その背後に音もなく近寄っていくマイノグーラさん。
次の瞬間、一気に距離を詰めたマイノグーラさんは背後からスキュラさんに抱き着く。
驚くスキュラさんの口に手を入れ思いきり開けると、逆の腕を伸ばしてクトゥルフの肉片を持ち上げスキュラさんの口に放り込む。
すでに食べようと決意まではしてるんだから観念してさっさと食べちまいな。ってことである。
ごっくん、と勢いよく突っ込まれたせいで咀嚼すらできずに飲み込んでしまうスキュラさん。
とたん、うぐっと青い顔になり、お腹を押さえて土気色。
さらに蹲ってのた打ち回る。
足元の犬たちがキャンキャン叫び、全ての口から泡を吹いて白目で気絶。
断末魔のような揃った悲鳴が一度だけ、高らかに響いた。
刺激、強すぎだろコレ。
生きてる? ねぇ、生きてるスキュラさ……お、おお?
無数の口から溢れる泡が彼女自身を覆い隠していく。
なるほど、こうして泡の中で進化しちゃうわけか。
どんな冒涜的な姿になるのかな。オラ、わくわくして来たぞ!




