1007.地下世界まで長い長い
しかし、地下へ向かう通路が階段状じゃなくて緩やかなスロープなのはちょっとありがたい。
足場もしっかりしているし、二人くらいまでなら隣り合って歩けるだけのスペースがあるので多少激しい動きでナイトゴーントたちと激闘しても落下の心配がない。
とはいえ、そんな激しい動きで戦っているのはギーァや夢の守護者さん、猫たちくらいではあるが。
「ひぃ!? あ、もしかしてスパウさん」
りんりんさんが凄い驚いた声出してたが、その相手はスパウさんだったようだ。
ナイトゴーントを捕食中だったようで、頭に取り込んだナイトゴーントがいい具合に気持ち悪い形状だったらしい。
「沢山襲ってくる、一杯食べる」
楽しそうで何より。
スパウさんは何もせずとも相手側から捕食されに来るようで、持ち運ぼうとしたナイトゴーントたちが次々に捕食されていくようだ。
ナイトゴーントホイホイになっているようなので彼女にはそのままでいて貰おう。
「未知なるモノさんもおんなじことできないか?」
「さすがにあそこまで人外に足突っ込んでねぇなぁ」
え、そうなの? 俺はまた、こうか? とか言いながら捕食するとばっかり思ってたよ。
「しかし、夜鬼の数多すぎね!」
「コトリさんが手伝ってくれてるからいいけど、なのたちだけだとさすがに拉致されるの!」
さすがに地下世界に向かう通路だからか、凄く長い。
ってかもう、クトゥグアさんの浮遊で下まで連れてってもらった方が早いのでは?
ナイトゴーントテイムして降ろしてもらうのもありでは?
なんてことまで考え始めていた。
……
…………
………………
マジで長げぇ!?
え、なんなのここ、すでに二時間ぐらい潜ってね?
ひたすらナイトゴーント襲い掛かって来るし、下への通路長いし、戦いながら下っていくにしてもえげつないくらいに長すぎる。
「もう疲れたぁ」
「ログアウトしたいの」
「ちょっとオシッコ行ってきていいあるか?」
「仕方ない、小休憩して来てくれ。皆、プレイヤーが一度抜ける。ここでしばし休憩しよう」
とりあえず途中でトイレ休憩を挟むことにした。
プレイヤー陣が次々にログアウトしていく。
その間テイムキャラたちだけでナイトゴーントを撃墜していくのだが、うん、そこまで効率落ちてないね。
俺も目が慣れて来たのかナイトゴーントの場所はある程度分かるようになったのでレーザー撃ちまくって撃墜していく。
ドリームランド内でもログアウトはできるみたいだけど、その場にアバターが残ってしまうので無防備になってしまうようだ。
つまり、一度離れてログインしてきた時には、ドリームランド内で死亡していてもう二度とドリームランドに行けなくなってた、なんて切ない状況が起こったりもするらしい。
危険なので普通はこういう時にログアウトしたりはしないんだけど、さすがに休憩挟んで取り組まないと地下世界まではいけないようだ。
「いやー、危うく漏れるとこだった」
「強制ログアウト寸前だったある」
なんだ、りんりんさんも危険水域だったのか。
レイレイさんと二人が戻ってきてすぐに案内人君が戻ってくる。
「あれ? ヒロキさんログアウトしないんですか?」
「トイレ、どうしてるある?」
「まさか、紙オムツ!?」
「いや、筐体が自動でそういうの処理してくれるからさ。ほら、最新式の全自動制御式のゲームギアっていうの?」
「え、アレ買ってるあるか!?」
「お金持ちが買う奴じゃん! すごーい」
「まぁ会社辞めた時の退職金と貯金全部つぎ込んで買ったからな」
「よくそんな決断しましたねヒロキさん」
「おう、おかげで今は超リッチメンよ」
なのさんと未知なるモノさんが戻ってくるのを待って、俺たちは再び降下を開始する。
それからどれくらいたっただろうか? ようやく終わりが見えたようで、テインさんがこっちだ。とスロープの途中で洞窟のような場所に入っていく。
スパウさんを殿にして俺たちも戦闘能力が低いメンバーから順に横穴へと入り込む。
全員がそちらに入り込むと、ナイトゴーントたちが途端に襲ってこなくなった。
「まだ底があるっぽいけど?」
「ああ。あの先はナスの谷の最下層だ。降りる意味は全くない」
マジか!?
ドールがいる場所でもあるからあのまま降りてもよさそうだけど、さすがにナイトゴーントに襲われながらドールや別のクリーチャーと戦うのは勘弁願いたい。
しかも昏いし。
まさに深淵だよなこの辺り。
光らしい光がないから夜目を自然と覚えるプレイヤーたち。
そのまま昏い世界での移動補助スキルと共に光弱点やら光脆弱スキル迄貰ってしまうらしい。
ま、俺はスキルの取捨選択できるから問題ないけど、未知なるモノさんたちはどうだろうか? 案内人君とかほぼ確実に弱点付いたままになるんだろうな、日の光が差す日常に戻った瞬間、光がああぁぁぁぁとか叫びながら蒸発したりするかもしれない。




