1001.ライザン流ダイエット術
「「ぬああああっ!!」」
拳と拳がぶつかり合う。
道場の床が抉れ、衝撃波で俺の衣服がはためく。
なんだ、これぇ。
ライザンさんと本田君の激突は、先ほどまでは一般的な果し合いだったのに、今では超人同士のドッカンバトルに移行していた。
そのうちどっちも気を使ってハァッ! とかシュインシュインとか自分の体から湧き上がる巨大な気を見せつけながらスーパーやらゴッドやらに段階変化し始めるんだ、きっとそうだ。
「ヒロキ、何やらワクワクした顔してるけど、多分そんなことならないと思うぞ?」
「ユウよ。わかってねぇな。あいつら絶対空飛んだり殴っただけで山三つくらい突き抜ける打撃を放てるんだぜ!」
「アニメの見過ぎかな?」
「な、ならほら! 波動関連覚えたり、竜巻起こしたり、スーパーな頭突きで空飛んだりするんだろ!」
「ゲームのやり過ぎかな?」
「だ、だったら。えーっと、ええと……背後に霊体っぽいのでてきたり、超能力的なスキル使いだしたり。無駄無駄しちゃったり!」
「マンガの読み過ぎかな?」
「くらえぇい! 爆龍拳んんっ!!」
な、なんか出たぁ!?
「出たじゃんユウ!」
「あー、まぁこの世界ゲーム世界だったもんな。そりゃ出るか」
「ライザン流ダイエット術! 竜神墜としッ!!」
こっちもかよ!?
おおお!? 火炎系のドラゴンぽい一撃を両手で掴み取ったライザンさんが床に叩きつける。
それ、抱えられるんだ?
「何だと!?」
「ふん。貴様はまだまだダイエットに精通してないな。ダイエット術を極めれば、この程度造作もない」
ダイエットってそんな実践向きだっけ?
「今度はこちらから行くぞ! ライザン流ダイエット術! 爆裂大演舞!!」
お、おお?
レオタードのおっさんが両手を広げた瞬間、なぜか本田君の周囲で爆発が連発する。
なんですかぁー、これ?
「ぐ、が、ごあぁ!?」
意外とダメージ高いな。ダイエット術、強いのかも!?
「いや、ダイエットの術であんな攻撃出来てたまるか!?」
ほんとにな、なんなんだこの珍妙生物二人は。
その後もマッスルな二人の激突はライザン道場を粉々に砕きながらヒートアップ。
道場が途中で持たないと理解した俺は皆に退避を促していったん外へ。
しばらく待っていると、ライザン道場自体が爆散して砕け散った。
ライザンさんのダイエット術に耐えきれなかったようだ。
ただ、本田君の粘り強さにライザンさんが徐々に追い詰められ、結果、本田君のボディーブローを喰らったライザンさんが膝をつく結果となった。
「ぐぅっ。こんな……」
「ふっ、これが愛の力だ!」
違います、ストーカーの粘着力です。
「ふ、ふふ。いいだろう。こうなれば、我がダイエット術の奥義を見せてやる」
力み出したライザンさん、なぜかその体が光り輝く。
「な、なんだ!?」
「うぬぅぅぅぅぅ、はあぁぁぁぁぁ―――――っ!!」
光が周囲全てを飲み込んでいく。
眩しくて俺らも目を瞑らざるをえないようだ。
光が収まるのを待って、目を開く、すると……
灼熱し、赤く輝くスリムボディ。
ライザン流ダイエット術究極奥義を使ったライザンさんは一瞬で急激に痩せて細マッチョへと退化していた。
いや、なんか弱くなってね? 気のせいか?
一気に痩せた反動か、全身が真っ赤になっているが、ライザンさんは気にしてないようなので状態異常とかではないのだろう。
「な、なんだとォ!?」
「ライザン流ダイエット術究極奥義、真器態……久しぶりだな、この奥義を使うことになったのは」
「ふん、姿かたちが変わろうと、所詮は付け焼刃! 俺と彼女の愛の前には負け……ごぁっ!」
おおー、瞬発力がものすごい上がってる。
しかも灼熱ボディだからか、一撃食らった本田君が燃え上がった。
いや、人体普通に燃えちゃってんじゃん!? これ大丈夫!?
「ふっ、すまんなこの体になると相手を燃やしてしまうのだ、さっさと降参しなければ死ぬぞ?」
「ぬかせ! 少し寒かったくらいだ。むしろ暖かくなってちょうどいいくらいだぜ!」
やせ我慢してる場合かよ!? HP普通に減っていってるじゃん。延焼の状態異常だろそれ!
「俺は、負けん! 愛を取り戻さねばならんのだ!!」
「その意気や良し! ならば全力を持って相手してやろう!」
なんか宿敵とかラスボスみたいなムーブしてるけど、レオタード姿の細マッチョなオッサンなんだよなぁ。
あのレオタードどうにかしてくれ。
せめて胴衣のままだったらよかったのに……
戦闘は熾烈を極め、なんかもうよくわからんうちに勝敗が決した。
さすがに延焼状態で常時HP消えてくデメリット背負ったままライザン第二形態に打ち勝つのは無理だったらしい。
本田君は力尽き、ライザンさんが回復薬使って回復していた。
結局この本田君は何者だったんだ? 一般人にしては飛び出て強力っぽいし。




