99.初めての市役所
「こんにちは。本日はどのようなご用件ですか?」
受付のおねーさんが素敵なスマイル浮かべて対応してくれる。
俺はそんな彼女の前に座ると、用件を告げることにした。
「えっと、テイムしたメンバーが多くなってきたので家が手狭になりまして。出来れば新しい家に住みたいんです」
「承りました。それでは……」
「あ、待ってください、家自体は候補があるんです。ただ、ソレを置ける場所が無くてですね」
「えぇと、候補がある、ですか? どのような物でしょうか?」
アイテム欄を表示させた状態で相手に見せる。
宇宙船、の文字を見た受付のおねーさんは「えぇ……?」と若干引き気味に戸惑う。
「少しお待ちいただけますか。上のモノに聞いてまいりますので」
と、おねーさんが奥へと引っ込んで行く。
しばらく待っていると、ちょっと偉そうなおっちゃんが現れた。
「やぁヒロキ君。随分と凄い家を持って来たね」
「いや、なんで名前知ってんの!?」
「ああ、すまない。運営AIといえばわかるかね?」
「あー、了解っす」
つまり、他の運営AIと連携出来る、ハナコさんやタマモさんみたいなAI積んでる人のようだ。
やっぱり役所だからこういうAIが一人はいた方がいいのだろう。俺みたいにイレギュラーなもん持ってくる奴もいるだろうし。
「さて、じゃあ土地に関して説明しよう。まずこのタイプの宇宙船を置ける場所となると価格帯は少なくとも一千万程になる。今はその値段の場所はかなり空いているので土地を買うなら今がお勧めだ。お金はありそうかい?」
一千万って……えーっとさすがにそんな金は無いなぁ。
「今あるのはこんだけなんすけど。あとはレーザー銃売るとかですけど、さすがに一千万にまでは到達出来そうにないですね」
「だろうね。そこで……少し遠いが人の土地じゃない場所など如何だろうか?」
如何って、んー、まぁ別に人の土地じゃなくても問題無ければいいけども。
「立地的に何か危険とかあるんです?」
「結構な頻度で人外が近くを通る。一応場所自体は空白地帯なので誰も文句は言ってこないが、どうする? 価格は200万でいいよ」
それでも結構な値段なんだけど!?
「でもレギオン倒した金額で意外と支払えるぞダーリン」
「いやまそうだけども、俺の資金が底付くんだけど……まぁそこしかないか」
「ちなみに借り家なら500円からあるよ? 豪邸で500円の呪いの家だけど。君なら住めるんじゃないかな?」
ソレ絶対レギオンよりヤバいのいるでしょ。多分数億円分に匹敵するレベルの悪霊が。
「人外地域の空き地でお願いします。そこは悪霊付きとかじゃないんすよね?」
「うむ。有力AIには話を通しておくよ」
お金を支払い土地を買う。
本来ならいろいろ書類が必要になるんだろうけど、ゲームだからかお金払うだけで即購入だった。
「では、君の移動選択肢に新しい自宅の場所を登録しておいたから、向こうに向ったら宇宙船を出すと良い。宇宙船のセキュリティーに関しては自宅扱いにしておくよ。その土地に存在する間は宇宙船に他の生物が侵入してくることは無いよ」
つまり、空を飛んだり別の場所に置くと宇宙船内に誰かが入ってくることもある訳か。
基本自宅に呼べるのはテイム済みのNPCと招待したプレイヤー。それから何らかのイベントで自宅に呼べるようになるNPCくらいで、敵とか悪意を持つプレイヤーが自宅までやってくることはまず無い。
ドロボーとかのクラススキル持ちだったら入ってくるんだろうか?
その辺りはやっぱり輝君に聞いた方がよさそうだな。
「今ある自宅に関しては移行が済み次第戻れなくなるから気を付けてくれ。自宅内部に置かれているインテリア関連は一緒に無くなるから、置いてるアイテムは新しい土地に行く前に回収した方がいいよ」
マジかよ!?
「倉庫の中身は!?」
「無くなるね。引っ越し時に自宅倉庫内アイテムを移動させたい時は引っ越し屋に頼んでくれ。引っ越し屋は市役所から右に向って左の路地にあるよ」
まぁ、俺のアイテム位なら持ち運べばいいか。
「ああ、それとこれ、君の近くにいる人外の有力AIがいるところだよ。引っ越ししたなら挨拶はしておいてもいいと思う」
「ありがとうございます」
と、答えたものの、これって普通に向って大丈夫な奴か? なんか強制戦闘とかない? 大丈夫? とりあえず普通に行って大丈夫か輝君に尋ねよう。
なんかもう何かあれば輝君に尋ねてるなぁ俺。まぁ輝君がそういう役割だから問題無いみたいだけど。
「それじゃ、一度自宅に戻っていろいろアイテム詰め込むか」
後やる事って何かあったっけ?
鍛冶屋行く位か?
……あ。も一個思い出した。
稲荷さんと昆虫対戦する約束だったな。稲荷さんが昆虫の取り方から教えてくれるとか言ってたっけか。
多分新しい自宅の場所が森の中だろうし、落ち着いたら探索がてら昆虫捕獲してみるか。




