プロローグ
アンケートに答えてくださった皆様ありがとうございました。<(_ _)>
VRMMO。
非日常的体験型仮想現実。
そのゲームは、ほのぼの日常オンライン。そういう名前のゲームだった。
簡単に言えば、ありし日の日常を追体験しよう。そういうコンセプトらしい。
フィールドは現代日本から少し昔の旧世代。確か昭和とか平成とか令和とか呼ばれていた時代の日本が舞台なのだそうだ。
俺にとってはその辺りどうでもいいんだけど、大人達は子供時代を体験し直せるということもあり、結構期待されたVRゲームだったりする。
そのクオリティは最上級の一言。
まさに現実的な世界観で小学生や中学生のアバターを使って学校に入学したり、友人たちと遊んだり、田舎の夏休み、みたいな懐かしい世界観を体験出来るのだ。
さらに、スキルや能力値があり、動物や不良達に絡まれれば戦闘も存在する。
ちゃんとしたゲーム要素も織り込まれているのでそっち方面を体験したい人にも需要があり、さらにこの【スキル】によっては妖怪、幽霊、宇宙人などと遭遇することだってできるらしい。
日常だけを体験したい人は戦闘スキルは取らなければいいし、霊感などのスキルを取らなければ超常現象的な存在と出会うこともまず無い。通り魔とかもいるらしいのでそれに出会うと殺されたりはあるらしいけど。それでも復活できるので一度死んだらアバター作り直し、という面倒なことも無い。
さらに、日常の中には隠された秘密とやらも存在しており、謎解きが好きな面子にとっても楽しめる、ようするに様々な要素を内包した自由探索型VRゲームなのである。
最近の頭打ちするB級VRゲームと比べると、一際飛び抜けたクオリティーと楽しめる要素。当然ながら世界中の人々が注目しない訳も無かった。フィールドが日本メインなので外人さんにとってはちょっと昔感とかないけど、これはこれで人気らしい。
さすがに人気があるせいかベータテスターには選ばれなかった、というかすでに抽選おわってたけども、そのRTA動画などはチューブにアップされているので研究させて貰った。
何より、俺の目的はただ一つ。その方法もある程度確立できた。
発売日と同時に予約していたゲームチップをゲットし、なけなしの貯金を叩いて買った筐体へと差し込む。
この筐体は普通のヘッドギア系の寝転んで体験するゲーム機とは違い、全身を寝かせることで粗相の心配もなく自動でトイレを行える機能が付いた、ちょっと高級なゲーム機なのである。自動洗浄機能もあるので粗相して汚しても新品同様、俺専用機として使えるのである。俺の貯金は一瞬で溶けたがな。
寝相が悪くてヘッドギアが外れたりもしないように体を固定する寝袋型。やり過ぎ注意らしいが、このゲームの為に買ったのだ。しっかりと楽しませて貰おう。
さらに寝てる間身体が痩せ細っていかないように適度に運動を施してくれる全自動フィットネスマシーンとしても使えるので俺も適度に筋力維持をするつもりだ。バキバキボディにも成れるらしいけど初回運動後とか立てないらしいから一先ずは健康維持分の運動だけで。
食事に関してのみ普通に取らないといけないけれど、それ以外に動く必要はないって言うのが実に良い。
さて、そんなゲーム機でフルダイブした俺が何を目的にこのゲームを始めたかと言えば……
「ふふふ、さぁ、私と楽しく楽しく遊びましょうか」
目の前に半透明の少女が浮かぶ。青白く透き通る白珠のような肌。
おかっぱ頭に白いブラウス、赤い吊りスカート。
このゲームのマスコットキャラクターの一人でよくCMに出ている学園怪談最初の大ボス。
ベータテスターたちがMAXレベル10で挑みながらも一度も勝つ事が出来なかった災厄の悪霊。
その名も【トイレのハナコさん】。
ベータテスター達が夜の学校を探索し、ようやく見付けだした。
一階女子トイレの一番奥にあるトイレで「ハナコさん遊びましょー」と言いながら扉を三回ノックすると現れるレベル40のボスキャラクターである。
当然、日常を過ごすだけのプレイヤーが出会うことなどない、霊感スキル系持ち専用の敵ではあるが、俺の目的はこのボスである。
圧倒的強者の霊圧。
絶対に敵わない実力。
負ける事がわかりきっているレベル1での特攻。
なれど俺の目的は……
「ハナコさん、一目惚れしましたッ! 俺にテイムされてくださいッ!!」
全力で、彼女に向けて……土下座した。
そう、俺はCMを見て彼女に惚れ込んだ。だから、チュートリアルでテイムスキルを取り、テイム初期の確実に手に入るペット選択を放置してここにやってきたのである。
そして、これがこのゲームの根幹を揺るがす想定外を引き起こすことになろうとは、この時の俺は全く理解すらしていなかったのであった。