引退したいです
突発的単発一発目
今後も何か浮かんだら書き散らします
大陸歴529年 - 魔王オーパス、人類への宣戦布告を行う。対して人類は同盟軍を結成。これに徹底抗戦を始める。
大陸歴332年 - 当時の勇者、レイモンドの手によって魔王オーパスが征伐される。
大陸歴334年 - 新たな魔王アッシュが誕生。勇者に再び征伐依頼が下される。
・
・
・
大陸歴379年 - 勇者ジョエル死去。人類同盟軍と魔王軍の戦争は拮抗状態のまま現在に至る
ディール王国発刊
人類と魔王軍 戦争の歴史
オズワルド・ミルディス著
大陸歴380年 初版発行
「これまた随分と古いのが出てきたな…380年初版って今から160年は前か?うわ、こっちのはもっと古い…表紙とか取れてるのもあるよ…」
仕事の途中で掃除とか初めて古い本を見つける。よくあることだ。
よくあるよね?
つか、探せば探すだけ出てくるな古い本。古い本というか古文書に近いな、こんなの。
コレクター癖は無かったと思っているが…いやこれはアレだな、ただ捨てるのが面倒だっただけだ。
今度一斉処分でもするか…?周りの奴等に色々言われそうだけど、持ってても意味ないしな…。
「あー、こういうやらなくていい事ってすっげー捗るんだよな」
本を読んでいたせいで固まった首を動かすと、パキパキと関節が鳴った。
既に仕事よりも本の整理に入ろうとしている。
あー、仕事辞めてぇ…。
溜まってる書類も、管理も、何もかんも放っぽり出して暮らしてぇ〜〜〜〜〜〜〜!!
と伸びをしながら考えていたら、部屋の扉がバターンと開かれた。
「魔王様!こちらにいらっしゃいましたか!緊急事態でございます!勇者が!勇者が攻めてきました!」
うんざりする。
魔王引退したい。
「とうとうここまで来たか、今どの辺りだ?」
「現在、城門に差し掛かったところだと連絡が入りました」
先程書庫に飛び込んできた男、俺の執事であるハインツは、一歩引いて俺に付き従いながら応えた。
「非戦闘員は隔離。衛兵も手を出さないように伝えておけ」
「既に手配済みでございます」
「流石だ。では謁見の間へ誘導するように伝えておけ。すぐに向かう」
「畏まりました」
ハインツはそう言うとすぐさま行動に移った。
有能な奴だ。こいつのお陰で仕事が多少楽になっている。ただコイツのせいで仕事から簡単に逃げられないと言うデメリットもあるが。
俺は自室で外向けの衣装を羽織り、謁見の間へ向かった。
「間も無くやってくると思われます」
謁見の間
王の椅子に座って待機していると、ハインツがどこからともなく現れ、耳打ちをした。
「わかった。お前は下がっていろ」
「畏まりました」
ハインツの姿がかき消える。
神出鬼没だな。
と、ハインツが消えたのとほぼ同時にバターンと扉が勢いよく開かれた。
荒いねぇキミら、人んちだぞ?
「俺の名は勇者ノア!魔王アッシュ!貴様を征伐しに来た!」
白と銀色に赤のアクセントという東方の国じゃおめでたいカラーリングの鎧を着た青年が、名乗りと共に飛び込んできた。
その後ろからゾロゾロと3人の仲間と思しきメンバーも現れる。
魔法使い、戦士、弓使い。
バランスのそこそこな編成だな。ただ仲間が全員女なのはなんなんだ。
「ようこそ勇者ノア。俺が魔族国メディレムナ国王、アッシュだ。ところでキミ、『俺の名は勇者ノア』って名乗ってたけど、勇者まで含めて名前か?」
軽いイジリを加えて話しかけ、相手の反応を確かめる。
勇者ノア以下勇者パーティ一行は、意味が分からないという表情で口の締まりが悪くなっていた。
よだれ出るぞ?
「ぁな…ンなわけねーだろ!!俺の名前はノアだ!!ノア・アレン!!」
「そうか、ノアくん。今日は一体何の用で来たんだ?」
「最初に言ったろうが!!征伐だよ征伐!調子狂うなお前!!」
「そうかそうか、依頼されてきたんだな。わざわざご足労な事で」
「おいなんなんだコイツ!!これが魔王か?」
失礼なことに、ノアは俺の事を仲間に確認し始めた。
俺は俺以外居ないんだけどな。
「間違いないわ。灰のような髪の色と燃えるような赤い瞳。保有する魔力の量も、魔王じゃないと可笑しいくらいだしね」
彼の同行者である魔法使いからのお言葉だ。あ、帽子で隠れててわからなかったけど、よく見るとかわいいね。
「クソッ!」
女の子の前でクソとか言うんじゃないよ
「コイツが俺たちの村を襲ったってのに、なんなんだよ!!」
「あ?村?」
「そうだ!貴様が軍を寄越して襲った村、シャルフの村だ!!」
俺が村を襲った?なんの理由があって?
「シャルフ?どこの国だ?」
「バルドラント王国だ!!」
バルドラント王国はここから近くも離れても居ない。戦術的、政治的、経済的にも、襲撃をしたところで意味のない国というのが正直な感想だ。
「ハインツ!!」
「ここに」
呼び出したハインツは先程同様に急に現れる。
それに対してノアは驚き、少し構えた。
正直俺もびっくりした。
「バルトランド王国にうちから進軍したことはあったか?」
「いえ、近隣国に進軍したこともありません」
「となると俺の名を騙る愚か者が居る可能性があるな。第六軍の亜人部隊から何名か見繕ってバルトランドを中心に調査させろ」
「早急に手配いたします」
俺はノアを放置してハインツに命令を下した。
魔族と言えど一枚岩というわけではない。メディレムナ国内の魔族・魔物に関してはその一切を完璧に管理している。しかし国外に発生するはぐれに関してはこちらの管理の下に無い為、それぞれが自由に生きている。中には今回のように勝手な行動を起こすものもいるのだ。
そんな村襲って献上されたところで、いや別に要らないし…としかならないのだ。
「さて、ノア・アレン。君の故郷を魔族が襲った事は大変残念に思う。だが正式な謝罪の言葉はない。その魔族が我々の管理下ではないからだ。故にその件に関してはキミたちの国の衛兵の怠慢ということになる。すまないね」
「そんな暴論が認められるか!!」
「国とはそういうモノだよノア・アレン。歓迎…というわけではないが、暫く滞在させてやろう。キミの正義感はもっと別のところに向けたほうがいい」
数人のメイドを呼び出して、彼らの案内をさせるとしよう。
そう思った時、鞘から剣を抜く音が聞こえた。
「これ以上の問答は無駄か。ならば斬り伏せるまでだ」
「物騒だなノア・アレン」
「うっせぇわ!魔王のくせにまともなこと言いやがって!あと人の名前をフルネームで呼び続けんな!ゾワゾワすんだよ!」
そう言うなり、剣を構えて飛び掛かってきた。
のを回し蹴りで文字通り一蹴。
彼は壁に激突し、動かなくなった。
俺はそれを確認すると、謁見の間を後にした。
はー。
魔王引退するの、当分無理だろうな…。
面白い、応援したいと思っていただけたら星5評価をお願いします
感想、ブックマーク等もお待ちしております。




