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怪しい宗教がトレンド入り

「た、ただいまぁー、マリねぇさーん……」


 家にたどり着いた時には日が落ちて暗くなっていた。当然我が家には門限が存在しており、その門限の時間をとうに過ぎており、恐る恐る玄関から上がると隣の部屋からバンッと勢いよく義姉が飛び出してきた。


「遅い! 遅い遅い遅い遅い遅い!!何時だと思って!」


 金髪の短い髪を揺らしながらドカドカと怒りに満ち溢れた表情近づき、料理に使っているであろうおたまを持ったまま壁に飾ってある時計を指す。


「ろ、六時です……」


「まったく、そんなに寄り道して遅く帰るんなら小遣い減らすよ! ほら、さっさとカバン置いてお父さんとお母さんにも帰ってきた事言いなさい!」


 そう言って嵐のごとくキッチンへと戻り、はぁーとため息を付きながらリビングを通って和室の方へ行き、そして両親の写真が飾られた仏壇の前に座り蠟燭に火を灯して手を合わせる。


 父はそこそこ売れてた漫画家、母はその父のアシスタントとして働いていたが、貴也が小さかった時に両親は交通事故で他界。


 そして貴也は叔父さんの家に引き取られる話だったのだが、父親の妹である東城マリによって引き取られ、今二人で不自由なく生活している。


「ただいま父さん母さん」


 暫く両親の写真を眺めてから、マリがいるキッチンの方へと向かう。


「マリ姉さん今日のゆうは……あ、ハンバーグ!」


「ふふん、あと少しで出来るから制服とか荷物片づけて、お皿とかだしてー」


 マリの作る肉料理系はどれも絶品だ、急いで荷物やら制服を二階の自分の部屋に放り込んで、言われた通り皿やご飯を用意してテレビを付けると、丁度臨時ニュースが流れていた。


「速報です、去年の三月に観測されていた白い彗星が近づいて―――」


 と、気になる所でマリがリモコンで別のチャンネルへと変えた。


「あーー、めっちゃ気になる所でー!」


「こんなのよりお笑いの方がいいもん、ほら、さっさと座って食べるわよ」


 ふてくされそうになったが、目の前にある好物のハンバーグを見てそんな気分も吹き飛んで一緒に食事を始める。


「貴也最近学校どぉ? 来週テストあるんでしょ?」


「あるけど、大丈夫だよ。余裕余裕。」


 などと言ったものの、テストは毎回赤点回避ギリギリの点数なので余裕とは言えない状況だった。


「ま、テストとかあたしにはどうすることも出来ないから、自分で頑張りなさいな。赤点取ったら苦しいのは自分自身だし、ふふふ」


 嫌味こもった笑いに反論したかったが出来る訳も無く、フンとふてくされながらハンバーグを口の中に入れる。


「あ、そうだ貴也。最近さ、YOOTubeで変な動画見てないよね」


「変な動画?……あっ、あの変な魔法信じますかとか訳わからない動画の事?」


 そう言いながら食べていると、マリの箸が止まり真顔になって貴也の顔をじっと見始める。それを見て思わず貴也も箸を口に加えた状態で止まる。


「ん、な……なに? ね、姉さん??」


 まじまじと見つめるマリの瞳はさっきまで両目黒だったのに、片方が緑色のアイシャドウになって口を開けて静かに語りかける。


「何もない……? どこか痛いとかは?」


「い、いやそういうのないけど、でも田中と小林は頭痛がってたけど、ちょっと姉さん、眼がおかしいぞ」


 おかしいぞという言葉にパッと正気に戻ったのか、アイシャドウが無くなり元の黒い瞳になり、自分の頬をパンと軽く叩いた。


「そっかそっか、いやね、あたしの仕事の同僚もそれ見て頭痛くしてたからさ、貴也の事だから見てるんだろうなぁって心配になっちゃって、何ともないんなら良かった良かった」


 そうガハハと笑いながらまた食事を初めて、貴也はどこか違和感を感じていた。


 結構怒りっぽいけど優しいマリ姉さん、だけど今、その時だけ姉さんが自分の知らない別人のように変わってしまい恐怖感を覚えた。


「マリ姉さん」


「んーー、なぁに」


「……いや、やっぱ何でもないや」


「何よ、言いたいことがあるんだったら言う、そうやって教えてきたでしょ」


「ほんとになんでもないって」


「ふーん、ならいいけど」


 言えなかった、いつも家族のように感じていたマリ姉さんに自分の疑問をぶつけることが出来ず、そのまま食べ終わり、普段通り皿を片付けて早めに自分の部屋に戻った。


 パソコンの電源を入れて、駄菓子屋で見たあの例の動画を検索しようとしたが当然消されていたが、SNSではあの動画の事でトレンドに入っていた。


「閲覧注意、海外の宗教の動画がヤバすぎた……こんなのもあるのか」


 調べれば調べるほどあの動画の危険性が上昇していった、動画を閲覧したら頭が痛くなったは勿論、家族内で謎の行動を始める所があれば、白黒の目玉の紋章を壁に飾って祈りを捧げるなど世界中で起こっている出来事だった。


「日本でも五十件以上……そんなにかぁ」


 ベッドに寝っ転がりながら、天井を眺めて小林が言っていた事を思い出していた。


「松崎さんの両親が、あの宗教に入っている……かぁ」


 まだ高校生で未成年である以上、大人に対して何か出来る訳でもない。

 なにより七海が自分の両親に何かされてるか未確定な上、彼女に関して自分は何も知らない、話したこともない。


 でも、好きになってしまった以上何かアプローチしなければならない。


(小林は付き合わない方がいいって言ったが、放っておくわけにも行かないよなぁ)


 明日勇気を出して七海と会話する事を考えながら、そのまま眠りについた。

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