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短編大作選

ありきたり世界

掲載日:2022/03/05

ドラマを12話、見終わって寝た。





目覚まし時計が鳴る。


ゆっくり止めた。


時計の数字を確認する。


遅刻だ!





支度をして、家を出た。


後ろから走ってくる人がいて、ぶつかられて倒れてしまった。


カラダが、痛い。





「何してるのよ。危ないでしょ?」


「ごめんなさい」


目の前には、私がいた。


魂が入れ替わってしまったのだ。


「どうしましょうか。僕はどうすれば」


「もう一度、ぶつかるのはどうでしょう」


「それしかないでしょう」





また、ぶつかると、元のカラダに戻っていた。


近道を使ってなんとか、時間に間に合った。


カラダは、少し痛かったが、安心が溢れた。





「まだ来ないのか? 新人は」


「初日に遅刻とか、ダメですよね?」


「まあ、緊張とかで、寝れなくなったのかもな」


「そうですよね」





新人は、ようやくやって来た。


それは、さっき、ぶつかった人だった。


「えっ?さっきの人」


「あっ、はい」


「遅かったね。私は、近道を使って、余裕だったわよ」


「そうなんですか」





就業時間の終了間際、電話が鳴った。


私の恋人が、事故に遭ったとの電話だった。


私は、ささっと準備を済ませ、走った。


タクシーを拾い、両手を絡ませて、祈った。





急いで、病室のドアを開ける。


「大丈夫?」


「大丈夫だよ」


「ケガは?」


「軽い打撲だけ」


「そう」


急いで駆けつけたが、大したことなかったみたいだ。





幼き日の、友達が殺された。


ニュースで、大々的に報道されていた。


殺人事件の第一発見者は、早朝ランナ一らしい。


忘れられず、思い出しては、ずっと友達の顔を想像してしまっていた。





私は、ドジといえばドジだ。


でも、アイデアはわんさか出る方だ。


忘れ物をしたり、コケてばかりだけど、それでいい。


「あっ、イタタタタ」


「また、ころんじゃった」


「あの、大丈夫ですか?」


超絶イケメンだった。


差し伸べてくれた手に、すぐに掴まった。





新人の男性と、仕事で遠出した。


帰り道、他愛もない話をしていた。


あの朝、ぶつかる以前にも、何処かで会った気がしてきた。


でも、いつかは分からない。


職場で出会うまでに、何度も何度も、すれ違っていたと思う。


「あの、あっ」


「何?」


「何でもないです」


新人は、大事なこと言いかけてやめた。


踏み切りを渡っていると、大音量の音が鳴り、急いで渡ったが、新人は渡らずに、まだ線路の向こうにいた。


「あの、僕」


「なに?」


「はい。言いたいと思っていたこと、今から言いますね」


「うん。でも、今かな?」


「僕、実は」


【ガタンガタンゴトンゴトン】


大事な言葉は、電車に遮断された。


「ごめんなさい、タイミング悪くて」


「謝らないの。もう謝らないでよ」


「はい、すみません」


「ほらまた、謝った」


「ごめんなさい」


「ほらまた」





新人といるところを、彼に見られた。


フラれた。


勘違いなのに。


浮気じゃないのに。


帰り道の夜、雨にもフラれた。


前から、女性が歩いてくる。


なんだか、妙に目を奪われた。


ハッとなった。


死んだはずの友達と、よく似ていたからだ。


擦れ違って、少し経ってから振り向くとら、もういなかった。





新人と、私は恋人になった。


新人からの告白だった。


二人で、手を繋いで歩いた。


「ちょっといい?」


そこに、金持ち風のイケメンが現れた。


「あ、はい」


「あなた、かわいいですね」


恋敵という言葉が、似合う外見や、言葉遣いをしていた。





あのときは、まだ何の関係でもなかった。


だから、浮気ではない。


元カレは、浮気ではないと知ったみたいだが、この街から去ると連絡があった。


追いかけるが、タクシ一で渋滞にハマってしまった。


私は降りて、道路を走って向かった。


しかし、間に合わず、元カレはもう、乗り込んだあとだった。





新人から、呼ばれた


「別れよう」


「えっ?」


自分への気持ちがないことを、悟った新人から、別れを告げられた。


「昨日のこと、違うよ」


「ごめん」


「恋心で、追いかけたんじゃないよ」


「ごめん」


私は、フラれて頭が真っ白になった。







私は失踪した。


想い出の海に行った。


誰にも連絡せずに。


そこに、金持ち風のイケメンが現れた。


知り合ってから、すこし話した程度だったが、たまたま、そこにいた。


イケメンは、私にキスをしようとした。


目線の先を見ると、元カレの新人の姿があった。


タイミングが悪すぎる。


変な瞬間を、見られてしまった。


新人は、こちらに全速力で走ってきていた。








なんだ夢か。


目が覚めると、ベッドの上だった。


少し、ドラマの見すぎかもしれない。

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