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余った食料は腐らせて破棄!?

 公共物の修繕や国防の強化を推進することによって、マルキア国内の失業者は次々と就労していった。新たな鉱山が次々と開拓されることで、鉄鋼生産量は前年度の1.5倍にも膨れ上がった。同時にそれを加工する施設も造設され、建築物や武器防具、生活用品にも次々と利用されていった。また、農地も開拓され、食糧の生産数もやはり前年度の1.5倍ほどが見込める量となった。


「最近のマルキアの発展は目を見張るものがありますね。ただ最近問題になっていることが、農作物がかなり余っているそうなのです」


エリスの報告によると、食料の供給量が、消費量を上回ってきたとのことであった。鉄と違って食糧は腐ってしまう。保存食にいくらかは加工できるだろうが、この国の食品加工技術はそこまで高くないようだ。かといって過剰な食料品が市中に流通してしまうと、価格の崩壊をおこしてしまうだろう。


「どのようにいたしましょう」


「国民が食べる量は、人口に応じて頭打ちとなるだろう。この機会に家畜を殖やそう。畜産業を営む者へ積極的に増資し、事業を拡大するようお触れを出そう。それから国が飼育する軍馬の数も増やすようにかけあっておく」


「かしこまりました」


 食糧生産が十分に安定してきた段階で、マルキアは家畜を増やしていく方針を打ち出した。食用の家畜は国民の食卓を豊かにし、労働用の家畜によって農耕や運搬の効率はさらに上昇した。


「桐生様、喜ばしいことなのですが、家畜に十分な餌を与えても、なおわが国の食糧事情には余力があるようです」


「過剰な農作物を国が買い上げれば良い。これで生産者は、生産量を意図的に制限する必要はなくなる。むしろ余った分を国に買い取ってもらえるのであれば、どれだけ沢山生産しても、生産者は丸もうけだ」


「国は買い上げた食糧をどのようになさるのですか? 軍や役人が消費するにも限界がありますし、国庫で貯蔵できる量もそれほど多くありません」


「いっそ買い上げて余った食糧は腐らせて破棄してしまっても構わない。もともと農作物はその年の気候で生産量が大きく変わるものなのだ。つまり適正量の供給だけを続けることは不可能であり、どうしても余る年は出てくる。かといって適正量の生産を基準にしてしまうと、不作の年は食糧不足となり、価格の上昇を招いてしまう。それは避けたい」


「たしかにマルキアは気候が不安定なので、凶作が続くこともありますね」


「ではどうするかというと、生産量が下ふれしたときであっても、国民に食糧が行き届くくらい、十分な量を生産してもらうことだ。こうすると大半の年で生産が過剰になるだろうから、それを国がすべて買い支えるのだ。これで農作物の価格はある程度一定に維持されるし、国民が飢えることもなくなる」


「資金は銀行から調達できますし、お金の面では心配要らないのですよね?」


「ああ。ただしこれを達成するためには、まず十分な農地と農業従事者を確保するのが必要不可欠になる。ここでもわれわれ中央銀行が、農地開拓に積極的に融資をおこなってきたことが活きてくる。先行投資しておいて良かっただろう」




 マルキア国は余剰に生産された農作物の買い上げを始めた。生産者は農地を広げることはもちろん、限られた面積あたりからとれる作物の量も向上させるよう、肥料や栽培方法も改良されていった。こうしてマルキアの食糧事情は、周辺国から飽食の国と呼ばれるまでに改善した。


 なお国が食糧を買い支える資金があるのかという点だが、こちらも中央銀行からの借用でまかなうとして議会に承認された。借用ばかり増えていくと貨幣の価値が下がることを懸念した者もいた。しかしいざ予算を執行してみれば、食料の値段はまったく上昇していなかった。議会も生産力が十分ある状況での資金調達は、価格上昇には至らないことを、実際の目で確認することとなった。


「何を心配しているのか分からない。ものが余っている状況では、ものの値段は上がりようがないのだがな」


マルキアの生産力はぐんぐん上昇。次回は税制にも切り込みます。

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