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難民防止!鍵となるは帝国の復興

「現在の帝国代表と会談します。マルキアのためにも、帝国の秩序は正さなければなりません」


 政治中枢を失った国からは、難民が周辺国へ流出するだろう。当然マルキアは、その流入先の筆頭になる。経済難民を多数抱え込むことは、今のマルキアの秩序を崩壊させる可能性がある。そうならいためには帝国の屋台骨は直してやらなければならない。マルキアと帝国の代表者達は、国境付近のマルキア要塞にて会談することとなった。




「会談の場を設けていただき光栄である。私は現帝国臨時政府を預かるサーヴェルと申す」


「おお、サーヴェル将軍か。貴公の名は隣国の我々にも及んでおる」


「マルキア王、先の戦争では、私は軍を率いて貴国の地を踏みにじった。その件について詫びなければならないな」


「とんでもない。貴公が聡明であったからこそ、両軍ともに血を流さずに済んだのだ。戦上手なだけでなく、兵達の命の重さを知っている貴公が、今後の帝国を導いていくのにふさわしいと思うぞ」


「もったいないお言葉でございます。ですが実は、折り入って要望があります……」


 サーヴェルは帝国の現状を語り始める。帝国は旧体制の指導者は一掃されたものの、国の産業はやせ細っており、町は失業者であふれ、民衆は困窮しているとのことであった。


「……という現状なのです。今の帝国指導者たちは周辺国を侵略する気はありません。つきましては、国家立て直しに助力いただけないだろうか?」


「もちろんだとも。ちょうどその主旨について話し合おうと、会談を設定したのだ。桐生どのもよろしいかな?」


「是非もありません。両国のためにも、ここは力をお貸しする時です。共に帝国復興に尽力いたしましょう」


 マルキア国としては今後友好国として、国家立て直しを支援すると約束した。まず帝国から吸い上げていた資金を返還することにする。といってもただ資金を譲渡するだけでは国家間の体裁を保てないため、無期限無利子で貸付するという形で、帝国金貨はすべて帝国に戻されることになった。国家間での無期限無利子の貸し借りなど、踏み倒されても当然なのだが、もし帝国が復興してマルキアへの恩を感じているなら、受け取ることにしよう。


「国王様、帝国国内は想像以上に荒廃しているとのことです。ここは私自ら帝国に赴き、指揮をとろうと存じます」


「桐生殿が自ら赴くとなれば、両国の友好の証にはなりそうだな。しかし我らが桐生殿が不在の間にうまくやれるかどうか……」


「私の目からみると、国王様をはじめ執政官の方々も、正しい政治と貨幣の感覚が育ってきているように感じます。軍事侵攻の脅威も今はないことですし、上手くやれるはずです」


「そうか。ではマルキアのことは我らに任せて、桐生殿には出向を命じよう。帝国へ赴き、国家を立て直してまいれ」


「承知いたしました」


 こうして帝国の復興支援として、私はエリスを連れて帝国の財務担当顧問として赴き、采配を振るうことになった。


敏腕な政治家はひっぱりだこになります。次回は帝国国内が舞台です。

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