第1話 これって転生ってやつですか?
夫婦らしき、いや、おそらくこの体の親らしき人たちが部屋から出て行った後、私はまず鏡を探した。
どう考えても自分の体じゃない!
胸まである髪の毛は金髪だし、そもそもここはどこだろう。
次から次へと湧いてくる疑問に頭が混乱した。
部屋の隅に鏡台が置いてあるのを見つけ、私は駆け寄った。
何、これ…。
私は目の前の、おそらく自分に呆然とした。
ふわっとした少し癖のある金髪に色白の肌。
ピンクがかった茶色の愛らしい瞳にバラ色ほっぺ。
年齢は十六、七ってところかな。
やっばい!
めっちゃ可愛い!
神様ありがとうございます!
何だかよくわかんないけど、私(?)めっちゃ可愛いんですけど!
私の記憶でいけば交通事故に遭って、それから気づけば崖から落ちたらしきこの少女の体に入ってて。
これって転生ってやつ…だよね。
でも普通、転生っていったら新しい命に宿るもんなんじゃないの?
なんでまたこんな年齢から…。
そう考えてふと思った。
この体の魂はどうなったんだろう。
もしかして…本来はその時に死んでた、とか。
そこに私が入って生きてる…みたいな。
「・・・・・・。」
あーもうっ!
考えてもわからん!
取りあえずはめっちゃ可愛く生まれ変わったってことで落ち着こう。
あとは…ここがどこかってことと、あと魔法とかって言ってたよね。
何か出来るのかな…。
私は試しに適当に言ってみた。
「ファイアー!」
「ウォーター!」
「風よ!」
「ヒール!」
しかし、何も起こらなかった。
ってやっぱりダメか。
そんなに人生甘くないっと。
私は気を取り直して窓の外に目を向けた。
広い庭園が広がり使用人らしき人がいる。その向こうには街らしきものが見え、その奥は森らしきものが見えた。そして辺り一帯を太陽が明るく照らしていた。
この家、結構お金持ちって感じ。
私もしかしてお嬢様ってやつ?
また色んな疑問が出てきたが、一つひとつ潰していこうと思った。
その時、ドアの向こうから声がした。
「アリーシャ、大丈夫?目を覚ましたって聞いて駆けつけてきたんだ。このドア開けていい?」
私はどうしようか迷ったが、取りあえず名前だけ聞いた。
「誰?」
「僕だよ。ノクスだよ。」
ノクス…?
さっきノクスがどうとか、風魔法で助けてくれたとか言ってたわね。
これは色々聞くチャンスかも。
私はこの世界のことを少しでも知るために、訪ねてきたノクスという人物を部屋に入れることを決めた。