表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/8

二十年前の、君と僕のお話

~二十年前~


「はい、これ貸してあげる」


「・・・小説?」


「小説っていうか、おとぎ話かな。

世界で一番古いおとぎ話って言われてるの」


「・・・おとぎ話」


「このおとぎ話も、私たちに新しい感情をくれた架空の物語の一つだから」


人と話すことが嫌いなわけではなかった。

ただ、当時は人と話すことが、なぜだかとても怖いことのように思えた。


「ちゃんと読んでね!」


「ちょ、ちょっと待って・・・」


君は無理矢理僕にその本を渡すと、どこかへ行ってしまった。




僕は一週間かけて、そのおとぎ話を読み終えた。


「・・・あの、秋月さん」


「何?」


「これ、ありがとうございました」


「読んでくれたんだ!!どうだった!?」


「・・・面白かったです」


「それだけ?」


「・・・」


「ねぇ、君はどう思う?」


「何がですか?」


「このおとぎ話は、私たちにどんな感情を与えてくれたと思う?」


君が貸してくれた本は、世界で一番古いおとぎ話と言われており、

その内容はというと、裏切りや憎悪といった、

人間の欲が嫌というほど表現された物語だった。


なんで彼女は、よりによってこの本を僕に貸したのかと、

おとぎ話を読んでいる間も、

話の内容より、そっちの方が気になって仕方なかった。


「・・・“恐怖”ですか?」


「恐怖かー。私はね、“嫉妬”だと思うんだ」


「嫉妬?」


「まぁ、あくまで私がそう感じただけなんだけどね。

だって、これは架空の物語だし、人の感情が何処から来たかなんて、

結局は想像でしかないでしょ」


・・・そんな、元も子も無いことを。


「・・・なんで、この本を僕に?」


すると彼女は、僕の目を真っすぐ見つめながら言った。


「だって君、このお話に出てくる人たちと、真逆だから」


「・・・え?」


「だから、君みたいな人がこのお話を読んだら、

どう思うか知りたかったの。それに・・・」


彼女は、続けて言った。


「君は優しい人なのに、それを必死に隠そうとしてる。

他の人は、自分がいかに良い人間かをアピールすることで、一生懸命なのに。

なんであなたは、周りに対してずっと無関心を装っているの?」


“無関心を装っている”


その言葉は、当時の僕を表すにはあまりにも適切すぎる表現だった。


「君は本当に優しい人なの?それとも、他の人と同じく、

頑張って優しいふりをしているだけなの?」


そう言うと、君はまたどこかへ走って行ってしまった。

毎日少しずつ更新しています。

明日の更新で最後になります。


よければ、最後までお付き合いいただけたら幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ