八ヶ月後の世界
~八ヶ月後~
「誕生日おめでとう。これ、プレゼント」
「ありがとう!開けていい?」
ハルがまだ小学校の低学年くらいの頃、
学校の友達を家に招待して、誕生日会でも開こうかと
ハルに尋ねたことがあった。
けれど、ハルは、
「友達とは、学校に行けばいつでも会えるからいいや。
パパとママと三人が良いな」
そう言った。
それから、ハルの誕生日は毎年、必ず家族三人でお祝いをしてきた。
「・・・パパ、これって」
プレゼントの箱を開けたハルは、
中に入っていたネックレスを見つめながら言った。
「うん。ママのだよ」
それは、ユズがいつも身に着けていた、
ピンクの花のネックレスだった。
「ずっとしまっておくより、ハルが持ってる方が、ママも喜ぶから」
「・・・ありがとう。大切にするね」
ハルと二人だけになった時、君の分まで頑張らなきゃと、そう思った。
けれどある日、ハルに突然こんなことを言われた。
「ねぇ、パパ。一人じゃできないことを、
一人でやろうとしなくてもいいんだよ」
ハルの言う通りだ。
君は君で、僕は僕。
君の分まで頑張らなきゃなんて、僕はとんだ傲慢だった。
いくら頑張っても、僕は僕以上のことはできないし、
ましてや君の代わりになんてなれやしない。
だから、僕は僕ができる精一杯を、ハルにしてあげようと思った。
「ところで、パパからは?」
「・・・はい?」
「だって、これはママからのプレゼントでしょ。
もちろんパパからもあるんだよね?」
「・・・」
ハルのおかげで、いつも通りの日常が、いつも通りに過ぎていく。
そんな当たり前のことが、どれほどかけがえのないことだろうか。
どれほど、幸せな事だろうか。
「今年はパパからのプレゼントは無いのか~。残念だな~」
「・・・明日まで、待っていただけると」
ねぇ、ユズ
君のおかげです。
今年も、ハルと一緒に彼女の誕生日をお祝いできました。
君も、見てくれてたよね。
もしかしたら、ずっとそこにいてくれたのかな?
一緒に、ハルの誕生日をお祝いしてくれてたのかな?
一週間、少しずつ更新予定です。
短いので、よければ最後までお付き合いいただけたら幸いです。