コント「コンビニ」
コント「コンビニ」
店員……ツッコミ
客……ボケ
○コンビニ店内(夜)
店員、床掃除を行う。
店員「掃除の後は品出しをやると。深夜のコンビニバイト、仕事が多いな。というか、俺、コンビニバイト初めてだし,
初日なのに、深夜に一人なんて絶対おかしいよな」
客、入店。
客「ウイーン」
店員「現実で自動ドアのウイーン言う人初めて見たよ。いらっしゃいま……」
客「さあ、やってまいりました、近所のコンビニ。今日も右足から入店です」
店員「おうおう、ヤバイ客来たよ」
客「やっぱり今日も右足から入店。私の歩幅が関係しているのかな、いつも右足からになっちゃうんだよね」
店員「どうでもいいわ」
客「左足から入店するなんて、恐れ多いね」
店員「なんだ、こいつ。一人でどうでもいいこと、ずっとしゃべっているよ」
客「あ、ポテトチップスの新商品だ。ええと、合法ポテチ、フグの肝臓味」
店員「なんだその味。ポテチの新商品って変わった味が多いけれど。でも、合法ポテチってなんだよ。ええと、フグの肝臓は法律で禁止だけど、味の再現は合法って意味なのかな?」
客「ほかの新商品は、牛の生レバー味、ベニテングタケ味」
店員「毒ばっかりじゃん。すごく美味しいけど毒ある食べ物じゃん。お菓子メーカーも大変だな、いろんな味をやりつくしたんだろうね。それで、毒物の味を再現したと。変なお菓子」
客「この店は新商品をどんどん仕入れるから、飽きがこなくて楽しいな」
店員「そもそも、なんでこんな商品を仕入れているだろう。たぶん店長が仕入れをやってるよな。なんだよ、変な客かと思ったら、この店も変だったよ。類は友を呼ぶんだな」
客「店員さん、すみません」
店員「はい、なんでしょう」
客「ボトルキープの芋焼酎、取ってください」
店員「やってませんよ、居酒屋じゃないんで」
客「やってますよ、コンビニなんで。ほら、レジの後ろ。名前書いてあるボトルがあるでしょ」
店員「本当だ。最新のコンビニではこんなサービスもやっているんだな。ボトルをどうぞ」
客「あと、フライドポテトとチキン、おでんもください」
店員「お会計は1000円になります」
客「千円札で。神社でお祓いしたやつだけど、ここで使っちゃお」
店員「ちょうどです。ありがとうございました」
客、レジ前の床にあぐらで座る。
客「それじゃ、カンパーイ」
店員「カンパーイじゃないよ。下品なイートインだな」
客「あ、忘れるところだった。カップ麺用のお湯で、芋焼酎のお湯割りを作らなきゃ」
店員「違う違う。店内で飲酒はダメです」
客「ボトルキープがあるんだから、いいんじゃないの?」
店員「うーんまあ、百歩譲って飲酒はいいです。でも、レジ前の床で飲むのはダメです」
客「すまなかった。移動するから、その前に一つ話を聞いてくれないか?」
店員「手短になら」
客「君は新人だよね? 前の人が辞めたから君が入った。君、前のバイトが辞めた本当の理由、知っているかい?」
店員「はいはい、知らない、どいたどいた」
客「つれないな。亡くなったんだ、不幸にも交通事故で」
店員「本当ですか?」
客「俺はここの常連で、仲良かったから、アイツを弔ってやりたいんだ。だからこんなバカをやっているんだよ」
店員「そうなんですね」
客「悪いがこの一杯だけ飲ませてくれないか? アイツがよく立っていた、この場所で」
店員「お客さん……」
客「君も一緒に乾杯、どうだ?」
店員「ええ、ぜひ」
店員、コップを持つ。
客「天国のアイツに乾杯」
店員「乾杯……ってなるか、アホ。前のバイトが辞めた理由、知ってるわ。ヤバイ客に毎日絡まれたからだよ。お前だな? そのヤバイ客」
客「てへ」
店員「てへ、じゃない。ハイ、お酒のボトルを持つ、おつまみも持つ」
客「ちょ、ちょっと待ってよ」
店員「しゃべらない。ハイ立つ。回れ右。駆け足用意。前進。ハイ、自動ドアウイーン。ご来店ありがとうございました」
客、店から出る。
店員「ふう、これでやっと掃除が再開できる」
客、笑いながら拍手、そして再入店。
客「ハ、ハ、ハ。君、気に入ったよ」
店員「またですか、今度はなんです」
客「私の姿に見覚えは無いかね?」
店員「て、店長。一体どういうことですか?」
客「前のバイトは接客のストレスで辞めてしまったから、君は大丈夫なのか気になってね。少々試させてもらった」
店員「この程度の客をあしらうのは余裕ですね」
客「頼もしいな。この後の時間帯、変なお客さんも来るだろうけど、頑張ってね」
店員「はい、頑張ります」
客、店から出る。
店員「よし、朝まで気合入れて仕事するぞ」
客、入店。
客「ウイーン」
店員「いらっしゃいま……」
客「右足から入店。店長、右足から入店、ててん」
店員「やっぱりお前かい、一番ヤバイのは店長かよ。もうこんなバイト辞めるわ」
客「辞めないで、お詫びにコレあげるから辞めないで」
店員「なんなんですか?」
客「フグの肝臓、めっちゃ美味しいから」
店員「あばよ!」