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0話 プロローグ

約2000年前。一つの文明が滅んだ。



英知によって機械技術と燃料物質で発展していた世界は一瞬にして、退化した。




その原因は、戦争。




神族と呼ばれる種族の住む『神界』


魔族と呼ばれる種族の住む『魔界』


そして、人族と呼ばれる種族の住む『現界』




どの世界がこの星の正しい世界か、を争って三つの種族が現界で戦争した末に、今まで積み上げた技術も英知も歴史も失われた。






変わりに世界には動物や自然が増え


魔法という技術が生まれた。






この世界は、もう魔法が使えて当たり前。


魔法を使って生きるのが当然。



魔法で、誰かを救い、誰かを堕とし、誰かの人生を変えるなど、普通なのだ。


















港から少し離れた閑静な森の中で、突如爆発音が響き、鳥達が辺りを見回す。


ずんと地響きが鳴り、動物達が逃げ出す。


普段静かな森を騒がせているのは、四人の男女と巨大な蛇の魔物。


剣士と格闘家の男は大蛇と睨み合い、魔術師の女は魔力を溜め、法療師の女は下がったところから状況を見ている。


「行くぞ!」


「おう!」


男二人が大蛇に向かって駆け出す。


大蛇は動くことなく赤い目に二人を映す。


「はぁ!」


「うら!」


剣で斬り付け、ナックルで叩くが、鱗も傷つかず、ビクともしない。


大蛇が頬を大きく膨らませる。


「毒霧だ!」


「ひるませて方向変えろ!」


「オッケー!」


魔術師が掲げた杖の魔石がきらりと光る。


火属性特有の赤く濃い魔紋が広がり


「いっけぇぇ!」


そこから炎の玉が発射される。


男二人は魔法が直撃した後、すぐに追撃出来るようにと大蛇の方に目を戻した。


炎は勢いを増し、真っ直ぐ大蛇に向かう。


が、途中で失速し、男二人の真後ろに落下して爆発した。


同時に毒霧が吐き出される。


「うわぁぁぁぁ!!」


「どわぁぁぁぁ!!」


爆発の衝撃で吹き飛ばされた二人は毒霧と大蛇をかわし、後ろの地面を数メートル滑る。


「えっと・・・・そのまま離れ・・・やっぱり一度戻ってきて!」


法療師の女が迷いながらも指示する。


男二人は大蛇が動く前に横を通り過ぎて元の位置に戻る。


「危ないところだったわね」


「お前のせいでな!」


「あそこは当ててひるませてからの俺達の攻撃妥当だろう?」


「正面に立たれると邪魔で気が散るのよ!」


「前衛が敵の前に立つのは当たり前だろ!」


「待って待って。そういうのは後にして回復を・・・・ああ、でも先に足止め?ええっと、何使ったら・・・」


「こういう時は補助術」


急に日が陰り、暗くなる。


四人が頭上を見ると、大蛇の尾が振り下ろされていた。


「避けろ!」


それぞれ別方向に跳び直撃は避けるが、強い衝撃破が四人を襲う。


「きゃあ!」


「ぐあ!」


「きゃあああ!!」


「くっ!」


固い地面に倒れる。


大蛇はゆっくりと迫っている。


「皆!立つんだ!


「でも、勝てないわよ・・・・」


「諦めるな!俺達は今まで諦めなかったからここにいる!」


「今度は、ダメかもな・・・・」


「何度も聞いた!だがこうしてここまで生きてきた!」


「逃げようよ・・・」


「逃げるには勝つしかない!戦うんだ!俺達のパーティーは、こんな蛇に潰されたりはせん!奮い立て同志!」


三人は顔を見合わせ、痛む体を持ち上げる。


「仲間を信じろ!俺達には出来る!勝てる!」


それぞれ闘志の宿った目を大蛇に向け、戦闘態勢を取る。


「行くぞぉぉぉぉ!!」


「「「おおおおお!!!」」」


剣士が先導を切り駆け出す。


大蛇が大口を開けて剣士に襲い掛かる。


剣士は口に剣を突き刺してやろうと、ぎゅと剣の柄を握った。





瞬間、目の前に鋭利な何かが迫ってきた。



「うおおおおああああああ!!」


思いっきり足に力を入れて踏み止まり、大きく後ろに仰け反ることでそれが目に刺さることを回避した。


どんと尻もちをつき、顔を上げる。


「な、なんだ・・・?」


大蛇は目を見開き、震えながら動きを止めていた。


その口から尖った大きな物が突き出ている。


水晶のような透き通る刃から、冷気が目に見えて揺れている。


「氷柱・・・?」


「氷の魔法!?一体誰が・・・」


「あの、すみません」


突如聞こえてきた女性の声に、剣士は慌てて立ち上がる。


「この辺の地理に詳しいですか?ちょっと聞きたいことがあるんですけど、今忙しいですか?」


大蛇の後ろから人が姿を現す。


清涼感ある青い色の髪。


優しく細められる緑の瞳は水を滴らせた葉のように輝く。


穏やかに微笑むその容姿は、天女が人のふりをして来たようで


「コモリという町を知っていますか?私達港から来たんですけど・・・あの、皆さん?」


「美しい・・・・」


「はい?」


「グギャァァァァァ!」


バリンと氷の砕ける音がして、大蛇の口が閉じる。


「何!?」


大蛇は血走った目で女を睨み、咆哮を上げながら体当たりする。


「危ない!」


剣士が叫ぶも遅く、大蛇は女を飲み込もうと大口を開けた。


女は表情を変えず、大蛇を指さす。



指先から地属性の魔紋(まもん)が浮き上がり、ドンと地中から岩が迫り上がる。



岩は大蛇を持ち上げ、空に向かって押し上げた。


宙に放り出された大蛇に四人は上に目を向ける。


「どうする?」


「出来るだけ残してあげてください」


別の男の声がして、人影が岩の上に乗った。


暗い茶色の髪が風に揺れる。


上を見上げる青褐色の目が大蛇のある一点を見つめる。


男は剣を握り締め、ジャンプして大蛇の首、目掛けて剣を突き出す。


肉がぐちゃりと潰れる音がして、大蛇の奇声が森中に響き渡る。


その声量と超音波のような甲高い音に四人は必死に耳を塞ぐが、女は上を見ながら微笑んでいる。


そしてその指先にまた地属性の魔紋が展開され、光が男の足を包んだ。


男はそれを確認して剣を引き抜く。


足を振り上げ、真下に向かって大蛇を蹴り落した。


抵抗もなく地面に叩きつけられた衝撃でどおんと森が揺れ、鳥達が木から飛び立っていった。


「ごほごほっ・・・・」


土煙が広がり視界を塞ぐ。


風が吹くと少しずつ晴れていき、煙がおさまると大蛇が横たわっているのが目に入る。


大蛇の頭と胴体は今にも千切れそうな細い皮でつながっている。


「やったのか・・・・?」


剣士が剣先でつつくが、ピクリとも動かない。


「お疲れ様でした」

「うん」


大蛇にトドメを刺した男は女の隣に並ぶ。


「これで静かになりましたね。それで、皆さん?」


「お、俺達のことか!?」


「はい。コモリの町を探しているんですけど、恥ずかしい話、迷子になってしまって。この辺にあるはずなんですけど、どこか知りません?」


「あ、あぁ、その町ならここから東だ。森の中を真っ直ぐ突っ切ると見えてくる」


「え?この道なりを進むじゃないんですか?」


「この道は昔にあったメラリという町への道だそうだ。紛らわしいがマップにちゃんと書いてあるはずだが」


「実は私達この大陸に来るのは初めてで、まだマップを貰ってなかったんです。ここから東に真っ直ぐですね。ありがとうございました」


「ありがとう」


「では行き」


「待て!」


「はい?」


「お前達、俺のパーティーに入れ!」


剣士は二人に近づき、カードを出す。


「俺達は冒険者として旅をしながら各町や国、村で弱き者達を助ける正式な勇者パーティーだ。

この世を支配していた魔王が討たれ、既に28年!

世界は自由になったとはいえ、魔物はまだまだはびこり、魔王のような非道な欲望、凄惨な行為を行う輩は後を絶たぬ!

誰にも気づかれず苦しい思いをする弱き者の為に、俺達が世界を旅し訪れ、そして救う!

誰にでも出来ることではないが、君達にはその素質があると見た!

君達も冒険者のようだし、どうだ!共に世界を良くする旅をしないか?」


「それいいわね!弱い奴ならともかく、結構な実力者みたいだし文句はないわ!」


「仲間が増えんのも楽しいしな!」


「わ、私の仕事は取らないでくれるなら・・・」


四人は笑顔で盛り上がる。


女は男のパーティー認定カードをじっと見て、そしてにっこりと笑う。


「お断りします」


「うぇぇぇぇ!?何故!?」


「私達もパーティーを組んでいるんです。パーティーの複数加入は禁止でしたよね?」


「解散すればいいじゃないか!?」


「それは無理ですね」


「うーん・・・なら、俺達が君達のパーティーに入ろう!何人メンバーがいるのか分からないが、人が多いならギルドを立ち上げるのもいい!新生勇者ギルドとして君達と共に」


「ダメです」


「何故!」


女は男の腕を組み、体を寄せる。


「このパーティーは私とこの方、二人だけのパーティーなので、入れるのも入るのもお断りしてるんです」


「馬鹿な!?パーティーを組めるのは四人からだろう!?正式に組んでないと身分証明書も与えられず、制限も多いのに、どうして!?」


「このパーティー、定員二名につき入れません」


女はにっこりと深い笑みで返す。


その有無を言わさない強い語気に剣士は言葉に詰まる。


だが全く納得のいかない剣士は


「君ぃ!」


「うん」


「名を名乗れぇ!」


八つ当たり気味に男の方に問う。


剣士の態度に男は気にした様子もなく、無表情に


「アレリランティ」


と答える。


「アレリランティ君!」


「うん」


「君の意見は!?」


「彼女に任せる」


「ちなみに私はリーツです。申し訳ありませんがそういうことなので諦めてもらって、互いの旅の健闘を祈りましょう。それでは皆さん、お元気で」


「さようなら」


女は一方的に話し、四人に背を向ける。


剣士はなおも納得はいかないが、引き止める言葉も見つからず、その背中を見送っていると


「あぁ、その蛇の素材は情報料としてどうぞ持っていって下さい。あなた達が倒したと広まれば、私達よりもいい人があなた達のパーティーに入りたがると思いますよ」


女は去り際にそう言い、二人は森の奥に消えていった。


「何だったんだあいつら」


「変な奴らね」


「恋人同士で旅してるってことなのかな」


「ま、何にせよあそこまで言われちゃ無理だな。せっかくだし、これ倒したってユーザに報告しちまうか!この蛇、討伐依頼出てた魔物だろ?」


「それはダメだ。倒したのはあくまで彼女ら。我がパーティーの名声に嘘があってはならない」


「でも、金欠だしよ・・・・」


「もう何日も宿に泊まれてないし・・・野宿だし」


「お腹も空いたけど・・・・」


「そう。だから素材は貰う。一つ残さず全て俺達がはぎ取る!そして全部売る!!今夜は一等宿で焼き肉だー!!」


「うおおおおお!久々の肉だあああ!!」


「高級な魔鉱石の温泉に入れるわー!!」


「温かいお布団で寝れる―!!」


「取れ!この素材も、この悔しさも、肉も!全て俺達の糧とするのだー!」


「「「おおー!」」」


「挫けるな!俺達は必ず伝説の勇者、リランパーティーを超える功績を立てるぞー!」


「「「おおおおおー!!」」」


四人は高く、高く拳を空に上げた。










「あ。あの町でしょうか」


リーツとアレリランティは森を抜け、広原に出る。


目前には木造りの門があり、囲いの中に町並みが見える。


「話通りなら」


「なんか純粋そうな人達でしたし、嘘ではないと思いますけど」


「町は噂通りかな」


「そうだといいですね」


「うん」


リーツはアレリランティの手を握る。


「・・・・頑張りましょうね、アレリランティ様」


「うん」


二人は同時に一歩踏み出した。

魔紋=属性別の魔法陣と思ってください。


この小説が初投稿となります。ゆきみちと申します!

色々初めてで拙いかと思いますが、皆様に喜んでもらえるような小説が書けるように頑張ります。

これからよろしくお願いします!

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