懺悔の塔
『速報……。先程アプリス……セルジオ地区にて、………なテロ……が…………した。この件について、…連は…』
音響が掠れて聞こえづらくなっているが、マナシンスとか言う野郎がやったんだろう。教祖とか言ってるが、あんなイカれ野郎に付いて行く教徒共の気がしれねぇぜ。
「野郎ども好き勝手しやがって…」
「どうする?多分アイツらが握ってるだろうけど」
「いや、それは無いな。奴らは単独起動出来るだけの手段は持ってるだろう。不確定なJOKERを使ってまでやる意味は薄い」
「つまり?」
「奴らと別の奴が干渉してるな…」
何か判らない以上無闇に踏み込めはしないが、だからと言って無視する訳にゃいかない。
1つ不可解なのは、デバイスの操作権限の大半は元の個体に依存する。つまり、俺が優先的に操作権限を得れる筈だ。
デバイス操作なんてした事はないが、操作と言う以上何か手応えは来る。俺がデバイスかと言われればそれも違う。
デバイスと命名されている以上、それは人間じゃない。いや、確かに素体は人体だが、急成長の名残りとDNAの不完全複製が出る。
そりゃ、即席で出来たクローン技術だ。無理もない。
「で、目星はついてんの?」
「目星も何も、なぁ?」
その言葉の直後、周囲の霧が線状に纏まり始め、淡く光を放ち始める。その線は少しずつ塔の様に形を成していく。
神に近付きたいと願ったバビロニアの人々
神と同次元へと至ろうとしたマナシンス達
俺はそんな事、考えた事はない
神が居るのなら、何故稚児は死ぬ
神が居るのなら、何故俺は死なない
神は人々の救いになどならない
神は人々への慈悲を持たない
信じなければ救わない
信じた処で救われない
誰が、そんな低次元なモノを信じるか…!
「そんなに、神を嫌う意味もないと思うんだよなぁ」
「じゃ、テメェだけそうしとけ。俺は神なんて嫌いだ」
「この塔は、どんな意味を持ってんのかねぇ」
「決まってるだろ――」
―開ケルナ
無駄だ。
―知ルナ
無意味だ。
―自ラヲ否定スルノカ
…俺がどれだけ否定しようと、俺の未来はここなんだ。
俺は、神を殺す。
そうすれば、誰も神を憧れない。
クズ程度に殺される無価値な存在になんて…ッ!
「神殺し以外、有り得ねぇだろ?」
「…そうやって、1つの思想に拘るのも良くないよ?」
「お生憎様、…思想なんて大それたモンじゃねぇさ」
塔扉を開く。
暖かい光線。
安寧の位置。
それが、有るべき世界だ。
流れ込む記憶を、
溢れ出る感情を、
砕け散る意識を、
その全てを、俺は知らなかった。
俺は誰にも必要じゃない。
だから、俺は殺し続ける。
世界がどんなモノなのか、俺だけは知らなくて良い。
第8章 終末思考の金剛珠




