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Slave Of The One-Eyes  作者: 軍団長マッスル
第八章 終末思考の金剛珠
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誇れるモノは、

少し千切れ欠けている左腕を押さえながら、1つ呼吸を置く。幸い、他に人の気配はない。少しだけ、気を緩める。


「私を助けるなんて、意外とデレてくれるじゃん?」

「今の貴女なら、手を下さずとも死にますから」

「…バレてたか」


強く握り締める度に、腕に指が喰い込んで行く。もう不死身でもなんでもない、普通の少女の体。聞こえる金属音が、骨に共鳴して砕けていく。

いや、体という表現すら間違っているか。


「コレが…、アンチ・デバイス?」

「恐らくは。大体スワンプマンと同じ様なモノです」

「思考実験のアレか」

「被験者のクローンに偽装経験を刷り込み、自我を束縛。命令を受け付けるアークプロセッサと、それを永久施行させる反魔力循環術。

まぁ、言ってしまえば人形(ゴーレム)魔術の応用ですね」


何故それを知っているかはさておき、コレが本体ではないと言うのならば。本体は今どこに居るのか。


「そうですね、恐らく拘束されていると思われます」

「それか、この騒動の中心に居るか、だね」


恐らく私達を襲った理由はそこにある。何に使うにしろ、()()が持つエネルギーを使用したいのは明白だ。


「ENFORCER、」

「何でしょう」


体の形状劣化が始まっている。肩が軽くなり、両袖に()()()が重く落ちた。構成材料が砕け、異常なまでに縮小する腕。…そりゃそうさ。肉体も無しに精神だけで生きていける程、この世界は寛容じゃない。私もヨネもジャックも、所詮精神だけの存在。

妄想物が、現実に生きていて(存在していて)良い筈がないんだ。


「私の事、嫌いでしょ?」

「…えぇ、そりゃあもう」

「ジャックは?」

「…、さぁ」


あぁ、それだ。その言葉だ。

待ってたんだろうなぁ、あの娘。

寝て起きて、日々を暮らして、


そんな普通の日々が、欲しかったんだろうなぁ、って


「看取ってくれるのが貴女(― ― ―)かぁ。感慨深いねぇ」

「…せめて、死様だけは見届けてあげますよ」

「優しいんだね」

「無駄な事がしたくないだけですから」


『君は、正義とはどういうモノだと感じた?』

『正義…ねぇ。正義なんて所詮、人間が創り出した想像の産物。所謂エゴだね。そんなモノに興味も無いし、私は正しくもない』


『君は、自らを正したいとは思うか?』

『間違っているから、そこに私が居る。だからこそ、人殺しも陵辱も厭わない。卑劣だろうが外道だろうが、それを定義するモノなんて初めからない』


『君は、それで幸せなのか?』


本当の、最後の鍵が開く。

私は、…幸せだったかなぁ。

翆、黃色や灰色。

、…そんなモノが全てだったのに。


私は何を遺せただろうか。

私は何を助けただろうか。


そんな事に意味はない。


それは私の役目じゃない。


ならば、私は誇っていて良い筈だ。


人殺しも、

陵辱も、


挿絵(By みてみん)


私自身も。

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