フィオリア
「第8防壁、並びに第3駐屯場の突破を確認!」
「南部方向に生体反応多数!」
「西部保管庫爆破!損害不明!」
「総督、やはり不殺では…」
「…起動だ」
「そ、それは…まだ調整中で」
「我々ごと殺しても構わん」
『活動停止信号を全面カットだ、急げ!』
「凛…、私は――」
いる筈のない総督、なだれ込む未龍。そして、起動される何か。全くもって興味も無いし、知りたくもない。
相変わらず酷い夢だ。
「どうした?ENFORCER」
「…先に行っててください」
空から振り下ろされた剣戟を受け止めながら、苦痛混じりに発した。一瞬も揺れ動く事が無く、拮抗する力。
「わ、分かった。掴まれ、走るぞ!」
「ちょっと待って!急に――」
そのまま森を一直線に抜け、開けた台地へと出る。ここまで来れば、後はもう少し。霧の海までは後500m程。
「撒いた?」
「いや、一時的にだ。直ぐにENFORCERを追って来る」
「どうした?動きがトロいぞENFORCER!」
「…ッ!そう言う割には弱いですよ?BREAKER!」
「くッ…!テメェの減らず口だけは治らねぇな!」
「化物は大人しく小屋で寝てりゃ良いんですよ…!」
先程まで一方的に負けていた。なのにどうして互角にまで持ち込めているのか。例えあの動きに順応したと仮定しても、こんな互角にまでは持ち込めない。
「知りたいか」
「!?」
「それはテメェが順応した訳でも、強くなった訳でもない」
「じゃあ何か?手を抜いてるとでも?」
「お前らと殺り合うなら、力よりも頭脳って思ってな」
「…確かに、聞く方が間違ってたみたいですね」
しっかりと立っている様に見えて、持っている剣を支えにする事で持ち堪えている。やはり、過度な強化はそれ相応に喰うらしい。
「あぁ、保って後40秒だ」
「…だったら、何故攻撃しないんです?」
「そう急くな、少し考えてみろ」
何故待っているんだ?後40秒が嘘だとしても、次の打ち合いで押し勝てる自信はある。つまり、わざと待っているんだ。
だがおかしい。
詠唱も何もせずに、この危機から脱出する方法。
瞬間移動…?
「…遅かったな」
「マズい!」
急いでその場から飛び退く。直後、立っていた場所が閃光に包まれ、蒸発した。あり得ない軌道。あり得ない威力。
だが、本命はそこに無かった。
「時間逸脱、お前達の負けだ」
「させない…!神ノ刻!」
僅かに早く飛ばれたが、止まった空間内では私が有利だ。どれだけ速かろうと、どれだけ強かろうと、その全てを断罪する。
「よし、…後は合流しに行くだけですね」
「水鳥、進捗率は」
『少し予定より早まったが、誤差の範囲だ』
「岡部、」
『まだ1体しかないが、起動出来るぞ』
「凌、」
『内部データと監視体制の侵入完了』
「了解、作戦開始」
―男は言った
〈俺達が大地を取り戻す
―女は言った
〈戻るべき大地は死んだ
―子は言った
〈もう誰も信じはしない
―ヒトは言った
〈これが悪夢なら続けば良いのに
「さぁ、無法者。我々の大地、清算する時だ」




