表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Slave Of The One-Eyes  作者: 軍団長マッスル
第八章 終末思考の金剛珠
89/113

犠牲の上で

「その話は…、もう良いでしょう?」

「来たか、ENFORCER」


話の最中だが仕方あるまい。疲れ切った体を起こし、イグジストを背負う。一雨来そうな湿気が、逃げる気力を更に後押しする。


「雨は好きか?」

「…あまり」

「好きじゃない」

「じゃ、降ってくる前に着かないとな」


ユーノーは、この世界を見て何て思うんだろうな。

そんな言葉が浮かんで消えた。


―総合外科統括ターミナル


「さて、今日はもう上がらせてもらうかな…」


警備システムの確認を終え、夜勤の人に声をかけてから帰ろう。最近軍関連が建て込んで、あまり休めてなかったし。

そう思った矢先――


「た、大変です!」

「…こら、夜中に騒ぐもんじゃ――」

「いえ、患者さまが…」

「急変か?」


言ってから失言に気がついた。そんな状態だったらその場で呼ぶだろう。じゃあ何だ?侵入者だって誰一人も…。


「病室から居なくなってしまったんです!」

「散歩でもしてるんじゃないのか?」


あまり褒められた時間じゃないが、退院間近ならあり得るだろう。少し夜風に当たりに行くのも悪くはないからな。


「無理ですよ…、だって…」

「だって?」


化物を見たかの様な震えが、掠れた声を更に小さくした。


「昨日赤:1で運ばれた人ですよ」


「あ〜寒、寒い。そして寒い」


寒さで脳の回路がイカれて、同じ事しか考えられなくなってきてる。ホント寒い。そして体中痛い。刺さってた針とか全部抜いたけど、大丈夫なんだろうか。左腕も全く動かないし、ホント最悪。あと寒い。


「ん、何だこの野次馬」

「アレだよアレ。上見ろ兄ちゃん」


促される様に見上げた先、監獄塔か?それにしては明るい様な…。ライトアップじゃなさそうだ。…結局何だ?アレ。


「着信?…あの青髪か」


天才美少女ノヴァ様からの報告


ICE seen

oil airs

gim near

sea call

yet,I need times.


「…面倒な解き方しやがって」


盛大な爆発音と共に、流れ落ちる爆煙。

だがそんな事を気にしてはいられない。

野次馬を押し退け、監獄塔へ一直線に向かう。捻くれた暗号が出せるくらいには大丈夫らしい。だがな、ただでさえ財布の危機だってんだ。時計なんて買ってやるわけねぇだろ。


「おい君!こっから先は立入禁――」

「リヴェルの武藤です!通らせてもらいます!」


警備隊の横を抜け、ホールに辿り着く。大扉から行ける最終地点は屋上。だがこれだけ荒らされているとなると、別の道が必要になるだろう。


「見取図…、屋上…、あった!」


サブホールから多目的会議室を抜け、外付きの非常階段から登るルート。これ以外のルートも一応頭に入れておく。そうしないとまた戻る事になって、更に時間がかかる。


「私もね、ノヴァさんは殺したくないんだよ」

「…これだから」

「何?」

「そんな奴だから、セレナを助けられなかったんだろ」


臙脂色の目が、微かに紅く明滅する。カマをかけて正解だった。その代償に、面倒な仕事を押し付けられた気持ちが心を満たす。


― 2nd

「…ぇ?」

「ほ〜ら、やっぱりな…!」


その一瞬を突き、剣先に平行へ進むよう蹴り飛ばす。傷口から湧き水の様に流れていくが、そんな事に構っている暇はない。

JOKERを殺す前にR.E.Dを殺る事になるなんてな。時間稼ぎが出来るのかどうか。


― Oil Airs

「何なの…この声…?」

「執行者より予言者向きじゃないのかなぁ、あの娘」


爆破で剥き出しになった鉄パイプを拾い上げる。一撃しか使えない役立たずだが、少なくとも今必要なのは間違いなくコレ。

だって――


「エスカ…?どうした!エ――」

「…武藤っち」


押し付けられる鉄パイプ。何が言いたいのか分からないし、何をして欲しいのかも分からない。


「エスカちゃんは私が何とかする」

「じゃあ俺も――」

「アンタには、別の役割があるでしょ?」


頭を過る文章。

―Come early


「アレは…、本当なのか?!」

「そうだとしたら、全て合点がいくと思わない?」


2年前の悪夢

脳が凍てつく様な熱風

神の火を超えた、殲滅禁呪兵器


滅却(Oil Airs)を…、()してきて」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ