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Slave Of The One-Eyes  作者: 軍団長マッスル
第八章 終末思考の金剛珠
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タイムリミット

「そんな事だろうと思ったけどねッ!」


勢い良く飛び出すノヴァの拳を避けながら、その勢いを殺さずに膝蹴りを合わせる。思考が回転を繰り返し、より強固で確実な考えへと変わっていく。

全てを幸せになんて思ってない

正義の味方なんてやりたくない

平穏に暮らしたいだけなんだ


他の奴らがどうなろうと知った事じゃない…!


「凛さん…」

「見ろ、ENFORCER。この醜悪で、下劣で、無比な精神。コレが悪だ、コレが俺だ!人を殺せた程度で病むなんて、俺には想像つかないね…!」

「違う…!」


何故かは分からない。確かに、彼は悪だ。人を騙し、世界を裏切り、仲間を傷付けた。でも…、それでも1つ。1つだけ、守っていたんだ。


「それは…本心、ですか?」

「…あぁ、そうだ」

「そう、ですか」


その心を満たすのは虚空

その傷を塞ぐのは後悔

どれだけ変わり果てようとも

腐った性根だけは直せなかったね


「私は、貴方を止める」

「やってみろよ…!」


その言葉の直後、首に切り傷が入る。鎧の隙間を狙っているのか。そして、今のスピード。恐らく時間停止だな。一撃で殺せない所を見るに、MODE:Γ中は停止時間に制限掛けられるのか。


「どうした?脳を潰さないと死なねぇぞ」

「そんな事、分かってるんですよ…!」


乱打する剣が悉く破壊され、そして一瞬で再生する。折れた刀身が、辺り一面に広がるのはそう遅くはなかった。

自分も、仲間も助ける。それがしたいなら善悪を捨てろと言った。自らの信念、自らの力だけを信じた。

その結果があの大戦だ!最期まで気付かず、気付かせる人も居らず、その正義が紛い物だと信じ切って!どこへ行っても貴方は悪で…。


「何で…、私を殺さなかったの…?」

「…?」

「一緒に…ッ、一緒に死ねれば良かったのに…」

「何を、言ってるんだ…?」


正直、何を言っているのか分からなかった。忘れた記憶とか、覚えていない過去とか、そんなモノじゃない。明らかに経験していない行為。

これまでの人生、コイツに有った事は無かったし、関与した事もない。だったら何だ?神隠しか?


「もう…、凛・ライナーズは死んだ」

「…あぁ、ライナーズなんて聞きたくもないな」

「そう?いい名前だと思うけどな」


背後から青光が瞬くと同時に、音も無く発生した爆煙の中に飲み込まれる。火傷や爛れなんて生易しくもなく、一瞬で体中の肉が炭化して蒸発する。それでも続く意識に嫌になる。


「はぁ…ッ、私まで殺す気ですか?!」

「ちょっと早く死ぬだけだから別に良いでしょ?」

「巻き込む気無かったくせによく言うぜ…!」


爆発する直前、一瞬だけ眼が蒼く戻るのが見えた。まんまと演技に引っかかった訳だ、俺。活動限界まで、大体後5分。その4分、いや、3分で片を付ける。


「ホント、我が(オリジナル)ながらしぶといねぇ」

「オリジナル…?」

「戯言だ、気にするな」


上半身の鎧を蒸発させ、剣として再固定する。守備なんて必要ない。時間停止も、爆発四散も発動させない。テメェらに全て()()()()前に、一方的に殲滅してやる…!


MODE:ΓB(ガンマブレイク)2:53:84(コンディネイション)

「技名叫んで格好いいつもり?」

「言ってろ――」


間一髪で切り上げを避ける。一直線に血が滲むが、重ねられる斬撃の前で気にしている余裕は無い。避けるのに徹しても、ジリ貧で負けるだろう。


「だったら――」

「遅ェんだよッ!!」


咄嗟に薙ぎ払われる剣を受け止めるが、体ごと剣を振り抜かれ、弾き飛ばされる。二度()JOKERを奪われる訳にはいかない…。手に入れる前に殺さないといけない…!


「俺を殺す気なんてないのか」

「えぇ、まだ殺す気なんてないですよ…!」


双方から飛ぶ、剣撃と打撃。それを真正面から、力で捻じ伏せる。剣撃にはより強い一筋を。打撃にはより速い一線を。


「どうしたッ!首元を留守にするな!」

「言われな、あぅッ…、くッ」


背後から首を鷲掴みにされる。呼吸だけを生かされ、大半の血管を止められる。逃げ出そうと暴れるが、如何せんリーチが足りない。


「ENFORCER、早くしないとコイツが死ぬぜ?」

「言われなくても分かってますよ、別に」


空間が停止する。全ての動きがゼロになる、私だけの世界。どれだけ強かろうと、どれだけ化物じみていても、この世界には干渉できない。


「MODE:Γ 人間ノ刻(ダーティブラッド)…!」


一撃目で(両腕)折り(斬り)

二撃目で()倒し(裂き)

惨撃目で椿()落とす(千切る)


その全てを当て、解除する。


「…と、結構なモン使ったねぇ」

「えぇ、全くです」


殺された体は、塵となって空へ舞い上がる。その風を、名残惜しそうに眺めるENFORCER。彼女に関する記憶なんて一切無かった。消された感じも、拒絶した感じも無い。本当に記憶自体が存在していない。


「今の内に加瀬さんの所まで逃げましょ」

「ん、そうだね。そうしよう――」


体の真横に並ぶ、黒鉄の剣。付いた血液は留まらずに、常に柄へと流れていく。後は誰が居る?水鳥か?カルマーか?

振り返った先に居たのは――


「まだ、逃がす訳にはいかないね」


焔雷を纏う奴令嬢(焔人エスカ)

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