表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Slave Of The One-Eyes  作者: 軍団長マッスル
第八章 終末思考の金剛珠
86/113

晩餐

「くっ…、」


体に戻るのは7年来だった為、強烈な倦怠感が全身を襲う。ギリギリ立ち上がる事は出来るが、それでも四肢の痺れが強く現れている。


「加瀬っち大丈夫?」

「あぁ、何とか大丈夫そうだ…」

「そんな風には見えないけど」


低く伝わる轟音と振動。最終障壁もそろそろ限界らしい。ああ言うのが本当の化物なんだって、つくづく思い知らされてたからな。絶対に今じゃないが、この感覚が酷く懐かしく感じていた。


「ENFORCER、JOKERを譲渡せ」

「嫌です」

「…、早くしろ時間が無い!」

「そういうのは後でやって欲しいんだけどな…」


遂に封印結界板が蒸発する。降り注ぐ金属の雨を受け、拍動の様に明滅を繰り返す光輪を浮かべながら、ソレは姿を現した。

溶けた金属が鎧の様に体を覆い、所々見え隠れする体は黒く焼け焦げた骨になっている。


「最近体がおかしいなぁ、って思ったらそのザマか」

「一体どういう事ですか?コレ」

「…大方、感情のコントロールがイカれて暴発したんだろうね。制御装置の修繕なんて優先事項の筈なんだけど」


正直何が原因なのかは分からなかったし、アレが何なのかも分からなかったが、少なくとも今勝てる相手でもないし、かと言って逃げれるかどうかも賭けになる。


「加瀬っち」

「…あぁ、ソレしかないよな」

「ほら、つまんない意地なんて捨てて」

「…」


物凄く不満そうな顔をして、JOKERを投げ渡してくる。先の襲撃からするに、あの化物はJOKERを狙って襲って来たと見て間違い無いだろう。

何の為に狙っているのかは分からないが、取り敢えず引き離して体勢を立て直す。その後で、凛さえ見つけられれば、あの化物は殺せる筈…。


「じゃ、後はよろしく」

「お前らも早く来いよ」

「はいはい、分かってますって」


外口の非常階段を降りる音が遠くなるにつれ、骨身に直接響く圧迫感が襲ってくる。肺が灼け、脳は溶ける感覚。体の震えが、自身の骨を少しずつ曲げていく。


「ホント、貧乏くじはいつも私か」

「安心してください、私もですよ」


加瀬っちの言葉には答えられないかも知れない。少なくとも、あの状態から治す事がまず無理かもしれない。

あ〜あ、録画見とくんだった。


「さて、エーちゃん。勝率はどのくらいで?」

「聞かなくても分かってるでしょうに」

「…ま、そうだよね」


甲高い咆哮と共に、肉体が少しずつ復元されていく。どうやって対処すれば良いかなんて知らない。当たって砕けろ、初見実習。MODE:ΓB(ガンマブレイク)さえ剥がしてしまえば、正気に戻ってくれる筈だ…。


「…良い気分だ」

「人の能力使って、よく言うよ」

「少し手荒でも構いませんね?」

「あぁ、この際1つ分からせないとね」


体を少し下げ、攻撃に備える。精神接続を断てている事から、結構面倒なモノを抱え込んでるらしい。あの爆熱の件といい、光輪の件といい、暴発にしてはやり過ぎな気もしなくも無いが。


「神になれた?無差別殺戮野郎」

「まぁ、そんな所だな」

「…意外ですね、会話出来るんですか」

「そりゃそうさ、だって――」


荒れ狂っていた爆熱が、一瞬にして冷えていく。急激な温度変化のせいで発生する霧と、そこに流れる雷。いや、それは雷とも呼べない異常電圧であった。流れる電気が束となって見える程集約されている。


照らす光輪

響く衝撃

鎧を纏う神の姿


誰が呼んだか、呼べるのか

轟くその名は――


「感動の再会なんだからなァ…!」



神鳴(トルラウス)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ