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Slave Of The One-Eyes  作者: 軍団長マッスル
第八章 終末思考の金剛珠
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久遠の梅邸

綺麗な梅が沢山咲き誇っていた。俺が生まれた時から全く変わらずに、その花を散らせている。花見ってのは良いな。こんなにも見た目は違うのに、俺達と同じで生きている。


「花なんて見て、楽しい?」

「あぁ、楽しいな。心を癒やすには最適だ」


この梅も、2年後には無くなってしまう。ここが大きな介護施設になるらしい。どうせまた、政府の支援用なのだろう。


そこまでして生き残りたいのか?

そうまでして成し遂げたいのか?

爺さん婆さんに出来る事なんて殆ど無いだろうに


「まぁ、アンタもそれは分かってるか」

「私は別に、甘味処が有れば良いかな〜」

「それくらい自分で作れよな…、全く」


そう言いながら、財布の中身を案じてしまうのは酷いもんだ。洗脳に近い。


「…外、どうなってるかな」

「凛達がそんなに心配か?」

「いいえ?疑いも心配もしない貴方に引いてるだけ」

「友達を疑う様なことするもんか」

「はー、アレだ。辰吉ってロマンチスト?」

「常識だろ?それくらいさ」


この梅が無くなってしまうのは、俺としても看過出来ない。でも、消えた方が良いとも思っている。

この梅は、故郷。そして、檻なのだから。


「縁を切っても、また作ればいい」

「何をそんな当たり前な事を…」

「むぅ、今のは名言でしょー?」

「それより、開くの手伝え。俺一人じゃ無理だ」

「みたらし2本、でどう?」

「はぁ…、足元見んなよ」


いつ見ても変わらない門。手を掛ける所も、鍵穴も無い。おまけに、門が付く筈の家も無い。…相変わらず人を苛々させやがる。


「ほら、ボサッとすんなよ」

「あの木、まだ咲かないね」


ココに来た頃から、この辺りはずっと変わらない。命に必要なのは変化だ。進化や退化、破壊や再生。そして、創造と忘却。


「そりゃそうだ。あれじゃ周りの梅が強いから咲かん」

「綺麗なんだろうなぁ、姫林檎」

「てか早く手伝ってくれよ。はぐらかすな」

「…そう、だね」


軋んだ音を起てながら、ドアが開いていく。空いた先の暗闇から、肌寒い風が流れ込んでくる。いつ見ても、この光景は幻想的だ。


「じゃ、またね」

「そんな事言わなくても直ぐ会うだろ」

「みたらしの事、忘れないでね?」

「…はいはい」


癖で左腕を動かそうとしてしまうが、無駄な事は判っている。門を越えた先、慣れない右腕で手を振り返す。


「気が向いたら持ってきてやるさ」

「忘れたらまた、アレしちゃおうかなぁ?」

「それだけは止めろ、絶対」


呆れながら、闇の中へ飛び降りる。


「変わんないな、アンタ」

「貴方に言われたくはないね、絶対」

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