脱獄手引
「コッチで合ってるの?薄暗いし気味悪い」
「死獄人なんだから諦めろ」
「大体正面から入るから遠いんだよ。壁破ってd」
何かの声。警戒して見渡すが、特に気配はしない。
「…問題ない、よね」
「あぁ、多分な…」
「で、あの奥の扉か…」
警備関門が何層にも重なっている。脱獄手引する為でもないし、正面から通って行く。一応、武器は引っ掛かるから受付に預けておこう。捕まるのは御免だ。
「これより、R05とK01の面会を始めます。お気を付けて」
「心遣い、感謝します」
「早くしないと面会時間、切れるよ」
「あぁ、行こう」
真っ暗な空間に、1つだけ照らされている死獄人があった。近付こうとしても、一定半径に謎の壁みたいなのがある。封印用結界って奴か。
「お前には遭った事は無いな、サード」
「…」
「質問があるんだが、まぁ暇そうだし答えてくれ」
「随分と無口になったね、コレ」
「…お前、絶対馬鹿だろ」
「だってどう考えたってコレはJOKERだよ?」
あー、説明書読まないタイプだわ。こういうのがホント嫌いなんだ。いやいや、普通買ったら説明書読むだろ?コイツは初見の道具も無茶苦茶に使う奴だ、絶対。
「肉付を見ろ、絶対サードだって」
「いや、もしかしたらヨネかも知れないじゃん」
「…サードが良い?」
「あぁ、頼む」
そう言った直後、一瞬だけ眼に光が消える。瞬きを終えた時、その眼は金色に変色し、少し全体的に柔らかくなった印象を受けた。
「…変色因子なんてどこで拾ったんだ」
「で、何?2人掛かりでシにきたの?」
「何日溜め込んでんだ、この馬鹿」
「確か前殺したのが13――」
「こんな婬獣の話しに来たんじゃないでしょ」
確かに話が逸れる所だった。やっぱ直さないといけないかなぁ…。でももう修正不可かもしれないしなぁ。まぁ、今は聞かないとな。
「なぁ、ENFORCERの出自。知ってるか?」
「…で、知ってたらどうして欲しいの?」
「寄越せ。仮釈放くらいなら口効いてやる」
「どうしよっかなぁ。あの娘怖いし会いたくないしなぁ」
絶対おちょくってるが、そんなんで乗る人間じゃない。馬鹿共と話しし過ぎて慣れたってのは最悪だが、取り敢えず知ってるは知ってるんだろう。
「YESかNOで答えてくれ」
「昔流行ったヤツ?」
「あぁ、それで行こう」
「良いよ、暇だし」
「JOKERはお前だな?」
「YES」
「イグジストはお前か?」
「NOで」
「ジャックを喰ったのはヨネか?」
「そうだね」
「――に手を出したのはイグジストか?」
「NO、でも良いか。教えてあげるよ」
返答次第ではあの娘を傷付ける事になる。勿論、そんな事にはさせないし、しない。それが警官であり、軍人の誇りだ。
「私はそんな事してないんだな、これが」
「だったらこの鎖はなんだ?お前のだろ?」
収容した赤黒い鎖を見せる。その画像をマジマジと見た直後、何かを悟ったかの様な顔になった。少し感傷的になっているのか、楽しいのか。
「確かに、私のじゃないね」
「じゃあ誰の?知ってるでしょ」
「…言わなくても、向こうから来るって」
照明が全て点灯すると同時に、重なって聞こえる警報音。扉を破壊する音なんてしない。だが近づいて来ているのは分かる。瞬間移動でもないし、律儀に開けている訳でもない。となると…いや、そんな熱量持ってたらレーダーに引っかかって撃たれるに決まってる。
「で、どうする加瀬っち」
「どうせ処刑されるから見殺しでも良いんだが…、まだ役に立ってもらう」
「つまり逃げると」
「他の奴らを与えとけば…、まぁ何とか出来るさ」
扉の一部が赤熱化して融けていく。流石に長居し過ぎたらしい。さっさと準備しないとコッチまで殺されるかもな…。
「おい、囚人共。俺の恩赦で逃してやるよ」
独房の全ロックを解除する。嬉しがって出てくる奴や、助かりたいと逃げる奴。逃げたいのなら中央ホールを抜けないと逃げれない。…我ながら人でなしだな、全く。
「非常階段開けろ!」
「オッケー加瀬っち、任せられたゼイッ!」
気密扉を蹴破ったぞ…。まぁやっぱり、武藤の情報は間違ってるのがあるな。どうせガセでも掴まされたんだろ。そう簡単に秘密バラす事はないしな。
「監視カメラとかないの?ここ」
「ここは大戦時の名残だ。有ったら拍手してやる」
「少しは焦ったらどうなの」
囚人共の叫び声が小さくなっていく。距離があるから、なんて平和的観測も出来ない。恐らく大体が死んでる。化物に鳥使っても無駄だったか。
「確かに、焦った方が良さそうだな…」




