メタメタ
事務所に着くと、資材置き場が荒れていた。荒れ方的に、武藤が荒らして行ったのだろう。他に無くなっている物も無さそうだ。
「りぃ〜ん〜?!」
「うげっ!」
すっかり忘れていた。グダグダしてるかと思ったが、まともに俺の分まで仕事してやがる。…それに昼間の件も有るだろう。結構切れさせてしまったからな。
「…約束、破ってない?」
「破ってません破ってません」
「…じゃあ、良いよ」
許された、俺の罪。
「で、後ろのは誰?」
「あぁ、…え〜とですね…」
「そんなに濁さなくちゃいけないなんてねぇ…」
まずい、非常にまずい。コイツの本当の事言ったら芋づる式で金子が出て来ちまう。それは避けた方が良い、絶対良い。
「あ〜、近所で拾ったんだよ。ほら、最近捨て子が多いしさ」
「ふ〜ん…捨て子、ね。…それにしては状態が良さそうだけど」
「うん、…ま確かに」
「で、君。名前は?」
「名前…」
「無い?それとも忘れちゃった?」
「質問が失礼過ぎる」
「『あ〜ちゃん』って、言ってた」
「ふむふむ…、誰が言ってたか覚えてる?」
弱々しく首を振る。無理も無いか。あんな所に捨てられて…、るかも分からないか。まぁ誰が喋ってたって覚えられねぇもんな。てか誰だ喋ってた奴。
「あ〜ちゃん、あ〜ちゃん…」
「もう何かの呪文かよ」
「アマテラス…、アポロン…、アボカド…、」
「天照大神からアボカドはおかしい」
「それにしても綺麗な髪だねぇ」
「天使とか良くこんな髪色してるよな」
「して無いけど」
「ハイ」
「天使みたいで、帰れ無いから…『天廻』天廻どうよ?」
「名付け意味が最悪だが…、まぁ良いだろう。綺麗な名前だから」
「天…廻?」
「そう、ちゃんとあ〜ちゃんって呼べるね」
「良かったな、…で、ここらでちと問題が出た訳だ」
「問題?」
全員(3人)を椅子に座らせる。ここからは、物凄く重要で、かつ犯罪に成りかねない事だ。
「誰の家にコイツを住ませる」
「…あぁ、…あ?」
「俺は駄目だぞ、完全にロリコン判定食らってしょっぴかれます」
「そんなんだったら私も駄目。私の部屋は一人用なんだ」
「う〜い、帰りました〜」
「「…あ」」
完全に考えが合致した。
「…と、言う訳なんで、オナシャス」
「駄目」
「何でだよ」
「確かに俺の家は広い。確かに広い。だが、俺の家は有名所だ。そう、立派なゴミ屋敷として!」
「は?」
「今までの条件をまとめようか先ず。犯罪者にならなくて、広くて、ゴミで汚れてない所。そんな所有る訳は無し。そう、合致するのが一番多い奴が引き取るんだ」
「…俺今気付いたわ。物凄く失礼な話してるって」
「先ず俺だ。広くて、は合っている。だがその他が駄目だ」
「ふむふむ」
「そして凛。広くて、ゴミで汚れてない。2つだ」
「うん。ん?」
「最後にエスカだ。犯罪者にならなくて、ゴミで汚れてない。これも2つ」
「じゃあどうするのさ」
「優先度さ」
ふむ、つまり優先度を決めれば、俺かエスカかが引き取る事になる。まぁ駄目な順に並べればゴミで汚れてない→犯罪者にならない→広い。だから…あれ?
「ひょっとして…まずい?まずくないですか?」
「そうだ、凛。引き取れ」
「やだ」
「…確かに、妹居たよね?じゃあ友達にも困らない訳だ」
「従兄妹や従兄妹」
「てな訳で、君が選ばれた。光栄だね凛くん」
「おい、待てよ」
ここで巻き返さなければ、俺の尊厳と威厳とあと何かが崩れる。…俺の手腕を見せてやろう…!!
「このまま俺が引き取ると、何が言われると思う?」
「何言われるの?」
「『おいおい、またテンプレかよ』『もう見飽きたんだよその展開』」
「誰視点だよ」
「多分言っちゃいけない奴」
「そう、皆は新しい展開を求めてる。つまり、主人公である俺が、引き取っては、新しい展開にはなら――」
「あ〜ちゃん?今日から凛の家に住むんだよ?」
「うん、分かった」
あれ〜?おっかしいぞ〜?俺の予想だとこのまま誰かが引き取る筈なのに?
「じゃ、よろピク」
「F○CK YOU」