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Slave Of The One-Eyes  作者: 軍団長マッスル
第六章 画竜点睛の絵描き主
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善悪勘定

「…よう、頭は冷めたか」

「…」


月を見上げ、一言も発さなかった。幻滅したかの様な眼を向け、寝転んだまま林檎を齧る。その視線を無視して、ベッドに腰掛ける。


「…もう要件は済みました。消えて下さい」

「そうか?その割には、捕縛拒否してたじゃないか」

「消えて下さい」

「人を表面だけで見過ぎだ。お前は今までの人生で、一体何を学んだのやら。お前の教育者は全くもって役立たずだな」


齧る音が止まる。気に触る事が有るとすれば、教育者って所か。…そんなに大事なのか、教育者ってのは。


「本当に、幻だったかもね。聞いてた正義感は」

「確かに、正義感は無ぇがな。正義は有るぞ。今も昔もな」

「仲間も助けずに、任務を遂行するのが貴方の正義?…だったら、貴方は正義じゃなくて悪。

恨まれて憎まれて、凄惨な運命でも辿るといいッ!!」


珍しく荒げる声。暫くの沈黙が襲う。


「確かに善寄りの人間じゃねぇさ。だが俺は正義だ。それを遂行する為なら味方だって売る。それが最適解、それが正義。

武藤を先に助けていたらどうなっていたか判るか。アイツが何の為に自滅したか解るか。テメェのそんな浅はかで、脆すぎる思考が何を産むのか知っているのか!

意志も汲まず、人に当たり、考える事をしなかった無能少子ッ!それがテメェだ、それこそが悪だッ!!」


少しずつ消えていく月光。相手の顔が殆ど見えない。だが聞こえる。布団を握りしめる音、呼吸を整える音、汁が落ちる音。静かではあったが、静寂では無かった。

実際問題、二人とも合っていなかった。一方は幻滅し裏切られた事への八つ当たりとして、一方は自己防衛の為のエゴとしてその理論を展開した。

この手の問題に正解は無い。だが、正解に等しい()()は存在する。その真実として選ばれる事象は、結局利己的になってしまうのであった。


「人を見捨ててまで戦闘したいの?無能なのはどっちだBREAKER!」

「決まってるさ、テメェだ。お前は命にばかり執着し過ぎて、人としての意志を無視している!」

「人を助けない為の理由付けが意志なんだ、それをどうして解らないのかな!」

「人を助けない為の理由付け?人を助けない為に理由なんて要るものか。だから人が殺されるんだ。だからテメェは何も持ち合わせねぇんだ!」

「そんな、事…」


涙声になっているのは、自分でも良く分かっている。だから解らせないといけない。その真実を突き付けなければならなかった。こんな程度で人の心は揺らがない。

恨みと言うモノはとても大きい。その力は、心を揺らがせ、意志も乗っ取り、ただ純粋な獣として変化させる。


「人を救いたいなら、下らない思想は捨てろ。自らも他人も救いたいなら、その善悪勘定を壊せ」

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