島流し
「…やぁ、待っていたよ」
「契約通り、連れてきましたよ」
後ろに隠れている対象を見せる。何かしら反応、あわよくばはボロを出してはくれないだろうか…。
「ほう、コレが…龍か」
「聞かれても困ります」
「だろうな…、所で」
懐に手を入れた。何か取り出すのだろうか、それとも直しているだけなのだろうか。
「あの研究室へ行ったね」
「!?」
「…彼処は君が行っては駄目な場所なんだ。知っているだろう、第9棟へは近づくなと」
「何をしたんですか…」
「おや、知らなかったとは。だから君に対しての対応を変えたんだがね」
…今の奴は金子じゃない。本物の島金子として、目の前に立っている。俺はどうする?告発する?…無駄だ。全ての裁判の権限はコイツの管理下だ。勝てる訳が無い。…どうする?
「…ちょっとくらい教えてくれよ」
「何をだい?」
「何でソイツが欲しい。…神様と何か関係でもあるのか?」
「ッ!」
どうも神を侮辱される事は気に食わないらしい。明らかに苛立っている。この調子だと研究を横取り、じゃ無くて神を暴かれたく無かっただけか。
「…何だよ、ガキの考え方かよ全く。…ふっ」
「何がおかしい、神は救いだぞ。希望だ!その神を暴く?そんな暴挙――」
「黙れ外道ッ!」
目の前で威圧する。一瞬気が緩み、後ろに後退りした。…やっぱり直ぐ叫ぶ癖は直した方が良さそうだ。
「はぁ…、人を助ける?人の希望?そんな物に成りはしない。神など人間の創作物。詰まる所、俺達よりも下等な存在。テメェは自分より何も出来ない弱者が、自分よりも優れていると?嘲笑わせるな、ははっ。」
「神が、我々より下等…?下等なのは貴様だ外道!現に今我々は救われている。我々は――」
喉元に銃を突き付ける。暴れようとする手足を体当たりで詰め、拘束する。
「救われてるかどうかは、テメェが殺したアイツらに言いな」
鳩尾に肘打ちをし、気絶させる。…本当だったら、まぁ暴行罪なんだけど。証拠無いし。公務執行妨害とか何とかだし。
「武藤、段ボールある?」
「事務所になら」
「ちょっと金子詰めてアプリスチアに流しといて」
「はいはい、分かりました」
「バレたらヤバめだけど、まぁ問題無し」
「じゃ、さっさと退散しますか」
「…お前が運ぶのよ、それ」
金子と武藤を交互に見ながら窓の方を指指す。
「…え窓?」
「うん」
嫌々グダグダ言ってはいたが、取り敢えずは話がついた。武藤は厳つそうに見えて高所恐怖症だ。飛び降りる瞬間に悪戯してやろ。
「良いか?321で押せよ?」
「分かった分かった、ほらほら立てよ」
「行くぞー?3、2――」
「ほい」
「は?おい、ちょ、待っ!!」
情けない叫び声上げながら落ちていった。悲しい事に奴はこれくらいじゃ死なない。と言うかビルくらいだったら落ちても頑丈過ぎて死なないかも知れない。…ま俺は死ぬけど。
「さ、帰ろうぜ」
「どこに?」
「俺らの事務所さ」