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Slave Of The One-Eyes  作者: 軍団長マッスル
第六章 画竜点睛の絵描き主
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運命を定む世界

「…い、おい!起きろクソアマ!」


あれ…、何で地面に落ちたんだっけ。誰だっけ…、まぁ良いか。確か蹴り落とされて、落とされて…!


「JOKERは?!凛さんッ!」

「立つな!落ち着け、ここじゃ見えない。少し移動するぞ」


支えられながら立ち上がり、ゆっくりと歩き出す。肩や足首に痛みがある。傷の心配をしてくれているのだろうか。…いや、そんな甘い事はしない人だからな。


「あれ…、武藤さんは?」

「…、だから」


一言で理解をしたかった。両方とも取れる様な人間だからこそ、あんな化け物に好かれて襲われるんだな。


「着いた、後は降りるだ――」


空気が変わる。張り詰めていた空気に亀裂が入る。意識上じゃなく物理的に!鎖の束が瓦解し、霧が晴れ、元ある空間を乗っ取る様な感覚。

代わりに現れたのは、元の世界の様に見える、砕けた世界。霧の代わりに、雨雲とも呼べるか怪しい、空を覆い尽くして尚留まる事を知らない雲。スコールの様な雨が空間の亀裂で独特な音を奏でる。


「JOKERか…?」


その言葉は予想出来ていた。だがそんな事は絶対にない。先程までの世界がJOKERの世界なんだ。だからコレは…、別の人間の世界。

でも何かが違う。人の世界が現れるのは珍しい事じゃない。人格や性格、好みだってそうだ。外界まで干渉出来るのが能力だから、JOKERのもそんなに変わった所は無いんだ。でも、何だコレは…!


「行くぞ、不味い事になる」

「…うん」


「…なる程、侵食(ジェノサイド)タイプか。考えるね」

「無駄話も出来ないからな、早くやろうぜ」


俺に能力なんて無い。だから侵食タイプでも、呪術的なモノでも無い。殆どマグレみたいなモノだ。無価値の開門だって俺のモノじゃ無いし、成功したのだって2回目だ。

だがハッキリしているのは1つ。体はもう保たない。発動だけで右眼が押し潰された。内臓4つと、脳のどこかも潰れたらしい。雨と冬風で寒い筈なのに、汗と体温が上がっていく。膝が抜けかけている。

だが、自らの体が死なない限り、戦う資格は失わない。

紅い残光と共に、振りあげられた剣をギリギリで避ける。攻撃の軌道が読める。避けた勢いを遠心力として、手を横に振り抜く。

鈍い感覚を確認し、そのまま壁へ吹き飛ばす。腸が切れた感覚。だがまだ終わらせない。先程までのJOKERすら置き去りにするスピードで、蹴りを喰らわせる。

打撃音がしない。鼓膜が破れたらしい。蹴った足を退かそうと剣を振り下ろすが、それも避け、首を掴んで壁を削る。首の骨はまだ折れない。


「――・ ・・ ・―― ―・・― ―・ ・・ ――・――!」


何を言っているんだ。振り抜かれる剣を避ける。しかしその剣が向かった先は、あの未龍の破片。いや、生き残った本体。咄嗟にその剣を掴み、破片を踏み潰す。


「…終わりだな、」


そして掴んだ剣を振り上げ、切伏せた。だがいつまで立っても剣は降りない。何故だ、雨は降っている。時間も何も止まっていない。一体何故だ、理解出来ない。

意識が遠のき、そして理解する。時間が来た。もう体も心も動けない。雨は上がり、光が降り注ぐ。

意識は体から離れたのか。白く柔らかい世界が広がる。見上げたその空には、一点の曇りも無い晴天が広がる。



(私を見て)


消え欠けた視界を埋め尽くす閃光と共に、彼女は降臨した。

その姿は天使の様であり悪魔。

その気配は純粋であり渾沌。

王として、神としてのその姿。

己の命を前借りする、奇跡の代償を払う時が来た。

世界の決定に背いた咎人(武藤辰吉)は修正対象。


今絶やす運命は、この世界にはないのだから。

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