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Slave Of The One-Eyes  作者: 軍団長マッスル
第六章 画竜点睛の絵描き主
63/113

過失殺傷

「な――」


元が判らなくなる程異形化した筋肉。そこから無数に生える蛸の様な触手。こんな肉塊が自律移動なんて出来る筈もない。しかし無の空間からこんな化け物が出来る訳も無い。


「…あの時のR(Rebellion).E(Eternal).D(Dragon)か」

「もしかしてあの虫っぽい奴か?…いや、中身か」

「理解が早いようで」


増殖し続ける筋肉の中から、甲高い咆哮。目と言う器官が全く働いていないのか、無差別に触手を伸ばし始める。

その触手に死体が触れた途端急に暴れ出し、辺りを抉る勢いで触手を叩き付ける。中には折れた触手も有ったが、常に咆哮し続ける為に堪えてるかが判らない。


「何とかしてアレを殺さねぇと――」


不意にJOKERが斬りつけてくる。あんな化け物が何をしようと、味方になってくれるなんてのは無いらしい。ENFORCERで対応出来るのは良いんだが、それだと俺がこの化け物の相手をしなきゃならない。単独で殺せる確率は、低く見積もって10%程度。凛さえ居れば確実に処理出来るのにな。


「ッ!、跳べッ!!」


触手が飛んで来る。しかし判断が遅れた。触手に足を掴まれるかと思えば、いつの間にか四肢や体に纏わられた。抵抗が無駄だとは判っているが、やれるだけ殺ってやるさ――


「第八機構起動、装填開――」




―てい―の?

――、こ――かや―に立て――か―


いタい

―立て

かナしい

―見据え

あつイ

―構え

むなシい

―見定め

うれしイ

―引き抜け

たノしい

―殺せ

ネぇ―殺せ

貴方も、私も同じでしょ?

―有るべき場所へ魂を還せ


急に流れ込む文字列。俺の記憶にはこんな場面は存在していない。つまり、この触手が流しているのだろう。だが何だ、この感情は、


まるで人間じゃないか


「装填半解除、消し飛べ…不敬の天罰(ザドキエル)ッ!!」


纏わり着く触手が、撃ち抜かれたかの様に砕けていく。その隙をつき逃げ出そうとするが、痛覚などまるで無いかの様に無限に触手が絡みつく。無限に増え続ける筋肉を触手として体外に射出し、自滅を防ぐのか。

不敬の天罰のお陰で、五体満足とは行かないが少し自由が効く様になった。が、それも束の間であった。不敬の天罰の処理速度を超え、体内に取り込まれ始める。


「ぐッ、ENFORCER!JOKERをさっさと仕留めろッ!」

「ッ!武藤さ――」

「今は私でしょ?ENFORCER」


既に半身が取り込まれている。しかしそんな事がどうでも良くなる程の物が、存在してはいけないアレが――


「…死に損ないに用は無い。失せろ寄生虫」


突然の銃声と共に、何かが斬れる音がする。見えなくても予測は出来る。この化け物相手に対し、有効打を持っている人間は少ない。その中で、銃と剣を攻撃として搭載するのは、余程手段を選ばない異常者。

必死にソレに手を伸ばすが、もう届かない。しかしどれだけ無駄であっても、死に直面した人間には理解出来ないし、直面した事の無い人間にも判らない。

後悔とは自らを否定する賜物だ。

苦難とは無力を体感する試練だ。

破壊とは生命の根源であり、

再生とは死滅の幕開だ。

その全てを取り込んで、人は動物から外れる。動物の枠にも収まれなかった、有機物の塊となる。


手を伸ばした男の前で、無感情のまま切伏せられた。

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