にじいろピストル
「ほら、しっかり元通りだろ?」
先の戦闘で破損していた、対人用超高振動刀剣(呼ぶ度に名前が変わる剣)を受け取る。確かに銃の方が良いのはよく知ってはいるが、至近距離戦闘の時に強いのは銃じゃ無くて剣だ。散弾銃や機関銃でも無い限り、適当に発射する思考には至らない。
更に、多くの人は照準を合わせて撃とうとするだろうが、照準を合わせる時間、それを認識する時間、発射する時間と、少なくとも0.3秒掛かる。早撃ちが何故あの時間なのかは、的が動かないのを知っているから。だから平気でそれ以下の時間が出るのだ。
「いやぁ…、やっぱ綺麗だな。鋼の色」
「今回、未龍の反応が強い。…あの種族の事だ、どんな化け物が出てきたっておかしくは無い。そんな事まで考慮して、特別にコレもだ」
剣と一緒に、見慣れない弾が渡される。今使ってる散弾銃と携帯銃では使えない弾だ。
「その剣に細工してな、6発だけ特製弾が撃てるようにしてあるんだ。6発なら重過ぎず改造出来るし、お前みたいな手段選ばない奴にはうってつけだと思うんだが」
「あぁ、ここに入れんのか」
「対再生遺伝子加速弾、俺が名付けるに多彩殻弾だ」
「センス無いから黙れ」
長々と説明されたから要約すると、着弾した相手の再生力を、最大値を超えて加速させるらしい。過剰に再生をさせる事で、傷の治りは確かに早くはなるが、同時に新陳代謝が異常なまでに上昇。内側から自分に喰われるらしい。
効果時間はおよそ10分。それに耐えきれるエネルギーを内包していた場合は、何が起きてもおかしくない。
「…コレはあくまでも緊急事態でのみ使えよ。命の危険なんて、そんな甘い物で使うな。少数を滅し、多数を生かす為の道具だ」
「人の命を随分と軽く言ってくれるね」
「あとはエスカにコレを渡しといてくれ。奴の実戦用兵器の調整が終わってたからな」
渡して良い物なのだろうか。どうにかして逃がせないだろうか。そんな事を考えるが、無理だと分かっているモノを考えるのが馬鹿らしくなってきた。
「…凛」
「何?」
「奴を迎撃するには何が要る」
「ENFORCERだ。アイツさえ引き摺り出せれば、機能停止まで持っていける。問題はどうやって引き摺り出すかだが…」
「何だ、その程度も思いつかないのか」
「は?」
不信な顔、とはいかなかった。そこには何故か湧き上がる幸福感と、人情に流される拒否感があった。そりゃ女を戦場には駆出させたくないさ。でも、使える物は死人でも使えって言うだろ?
「大船、いや、戦艦大和の様に凄い軍艦を期待しろ。なんてったって、俺は天才軍師様だぜ?」
緊急戦闘―50分前―




