試合放棄
「作戦時にさ、ENFORCERはどこに居るの?」
エスカが聞いてくる。さっき会議出たばっかりの筈なのに、もう忘れてやがる。
「手錠着けて一番目立つ所、つまり現地司令部だな」
「下手したら巻き込まれない?」
「巻き込もうとしてるんじゃないかな…」
味方を殺させ、感情的にし、更に戦力の増強を図ろうとしているのではなかろうか。俗に言う敵討ちの理論だと思う。そんなモノの為に殺される向こうの身にもなって欲しい。…まぁ、出来ないからこんな事をするんだが。
「今回は、お前らも前線部隊。…しっかり働けよ、サボるなよ」
「私も?」
「お前も…って帰れ!」
ここに寄生して早10日が経ってしまった。馴染んでしまっているのが気に食わない。因みに追い出された時は補導されてた。
「でも、多分無理だよ」
「何がさ」
「ここの全戦力を上げた所で、活動停止までしか追い込めない。対して被害は甚大の可能性は十二分にある。多分、次は私でも足元に及ぶかどうか」
サラッと恐ろしい事を吐きましたよコイツ。そんな蘇生したら強くなるなんてご都合主義能力有ってたまるか。
「いや、強くはならないよ?」
「は?」
「そもそも今は分離体だよ?本来の力より低いのは当たり前。今はね…言わば、リハビリ中って所かな」
「…因みに戻ったら?」
「私も教祖も水鳥も、全員揃ってあの世行きだね」
殆ど負け戦みたいなもんじゃねぇか。絶縁体で包まれりゃまだ何とかなるだろうが、本体が馬鹿みたいに強すぎるから意味をなさなそうだな。
「せめてENFORCERを戦場に引き摺り出せれば、まだ何とかなりそうだがなぁ…。恐らく無理か」
「わざわざ囮を渡す馬鹿は居ないからねぇ。最上部はもう避難を始めてるらしいし、私達も逃げた方が良いのかも知れないなぁ」
「そんな事してみろ?俺達全員極刑だぜ」
「そもそも、私は戦えないんだよ?戦力外通告出してくれたって良いのに」
「使える盾は出来るだけ増やす。それが物量作戦だぞ、っと王手」
盾は増え過ぎても使えないが、味方を挟みかつ自らが敵から一番離れている時、肉盾は力を発揮する。逃亡行為を入れずに考えた場合な。
「そういやさ、ENFORCERって強いの?」
「…うん、まぁめっちゃ強かった」
「何か若干引いてるよね」
「そりゃそうさ、あんなエグい殺し方久々に見たぜ?腕とか落ちるのに気付けない様に、催眠掛けてから死体斬りしてたんだぞ」
「私は直接見た事は無いかな…、何か近寄り難いと言うか何と言うか」
「ノヴァさんは強いの?」
「そりゃ勿の論でご、痛ッ!!」
将棋本を頭頂部へと振り下ろす。軽くだから少し痛みが続くだけだが、こうでもしないとボロが出る。確信と偏見を以て断言する、コイツは喋り続けさせちゃ駄目だ。
「さてと、そろそろお呼びの時間だ」
「作戦本部?」
「武藤だよ、武器点検がそろそろ終わる筈。面倒だが行くしかないさ」
緊急戦闘―1時間前―




