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Slave Of The One-Eyes  作者: 軍団長マッスル
第一章 記憶喪失の幼き白銀
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「ほれ、立てよ」


どうやら先程の光景を見て、腰が抜けたらしい。生物というのは実に単純で、自分より強い者へは特定の状況下でしか逆らわない。でも未龍は生物じゃない。一生死ぬまで戦闘マシーンだ。ますます未龍なのか怪しくなってきた。


「ほら、乗れ。外まで運んでやるよ」

「…」


何も言わずに背中に乗ってくる。何故か奇妙な既視感を感じる。が、それも一瞬だった。


「なぁ、質問していいか?」

「…?」

「お前は何でここに居たんだ。ここじゃ無くても色々行けただろ」

「…怖かった」


喋れるかどうか試していなかったから、一瞬しくじったと思ったが、無事話せたので良しとする。


「何が?」

「神さま」

「神様…ねぇ」


この世界には、神様なんて居ない。信じれば救われるだの、神の導きのままにだの、妄信は聞き飽きた。たがコイツの言う「神さま」と俺達の言う「神様」は違うのかも知れない。少なくとも恐れられるような物では無い筈だ。


「親は居るのか」

「だれ?」

「あー…、じゃ一緒に居た奴とかは居ないか?」

「…、いない」


やはり、おかしい。明らかにコイツは未龍じゃない。であれば誰だコイツ。この場所で、こんな幼子が生きていられる訳がない。つまり、コイツの回収はさほど問題では無く、もっと別の目的が…?


「…あれ、閉まってる」

「え?」

「いやな、来る時に俺こじ開けたんだよここ。まいっか、また開けりゃ良いしなッ!!」


ドアに付いていた鍵を蹴り壊す。後で備品を破壊したとか言われるかも知れないが、風化して壊れたと言えばどうとでもなる。


「おい、武藤」

「…はいはい?」


律儀に待っていたらしい。足元にいちごミルクのパックが大量に転がっているが、随分前からいたのか。


「あれ、エスカは?」

「ふて腐れて寝てる」

「あ、そっか」

「で、どうする」

「ん?コイツを連れてくけど」

「…ちょっとだけ寄り道をさせてくれ」

「まぁ、遠すぎなけりゃいいけど…」


武藤の後に続くと、魔科学研究班に辿り着いた。多分合っているが、武藤の目的が判ったかも知れない。


「失礼しまーす…」

「…誰だねキミは」

「あ…、え、と…俺は凛と申し」

「おっちゃーん、来たぜー」

「おお、武藤くん。久し振り」

「…あれ、俺の事無視?」

「さて武藤くん、話は早い方が良いだろう?」

「ああ、頼む」


そう言うと、クソジジイは徐にカップを持ってきた。…俺の第一勘が言っている。今すぐあのカップを粉々にしなければ。


「ここに――」

「ぬぅん!」


カップを手から蹴り落とし、トドメの踏みつけを行う。どうせ武藤の知り合いだ。今までに一度もまともな奴を見た事は無い。


「ふぅ…、勝利宣言」

「…何したの」

「いやいや、どうせあの武藤の知り合い(クソジジイ)の事だ。何か良からぬ事をしようとしていたのは間違いない」

「そ、そんな事ないぞ…」


物凄い勢いで声が沈んでいく。そもそもカップ+ロリコンは駄目だ。羞○プレイだの聖○だの言い出しやがる。社会の異端だ。


「同族嫌悪だろ」

「うっ…」

「仕方が無い…、唾液で我慢しよう」

「今我慢しようって言ったよね、絶対俺の考え当たってたよね」

「「〜♬」」


新しいカップを貰い、アイツに手渡しする。…ちゃんとカップは紙製にさせた。


「こん中に唾入れれる?」

「…つば?」

「あー…、口ん中に水が有るだろ?それだよ」

「うん、分かった」


…なんか唾入れてる所見ると思う所がある。そのまま武藤達(カス共)と一緒にやってた方が良かったのかも知れない。


「はい」

「ありがとうな」


カップを受け取り、先程までの場所に戻る。ちゃんと釘は刺しておこう。


「はい、ジイさん。…飲むなよ?」

「いくら私でもそんな事はせんわ」

「ああ、まぁそうだよな。取り敢えず言っとこうと…、いくら?」

「…おっちゃん、検査は?」

「ああ、任せろ。10分有れば大丈夫だ」

「じゃあ頼んだよ」

「うむ」


そう言って出て行ったので取り敢えず着いていく。あのクソジジイの所に居たら精神が腐ってしまう。


「大丈夫か?」

「?うん」

「そうか、良かったな。あま」


今のは何なんだ…。俺はコイツと初対面の筈だ。過去に一度でも会った事は…無い。絶対に無い。なのに今、呆然としている。予想外な事で動揺している。今、名前を…。


「あま…何だって?」

「どうしたの?」


そう言えばおかしい。俺が回収に行く時、理由も無く苛立っていた。もしかしたら、ソレと関係があるのか…。


「いや、…何でも無い筈だ」

「いや知らねぇよ、お前の事だろ」

「何が駄目なんだよ」

「自分の考えに憶測を混ぜるな」

「すみませんでしたー」


少なくとも、今すぐに調べるような物では無い。また気が向いた時にでも調べれば良い。…良いだろう。


「あ、電話」

「はいはい、おっちゃん終わった?」

『おう、ちょっと戻ってくれ。見せたい物がある』

「ほーい」


軽く電話を流したが、見せたい物とは何だろうか。人間ならその場で言えば良いし、未龍ならもっと焦るし。


「…取り敢えず行くぞ」

「はいはい、分かりましたよーだ」

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