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Slave Of The One-Eyes  作者: 軍団長マッスル
第四章 予測不能のアンノウン
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机上には

周囲が暗闇の様に透き通っている。意識をはっきり保つ。少しずつ明るくなっていくのが、好きじゃない。森の中にある秘密の場所。綺麗な泉の側で起きる。

泉には色々映る。過去と今、未来は映らない。定まっていないからなのか、それとも存在しないのか。

過去の事はあまり知りたくは無い。朧気になっているのを晴らしたくない。過去から逃げているのか。それとも引き出しちゃ駄目なのか。

今引き出せるのは少ししか無い。


享者(お義兄ちゃん) アルスファ・オーディン


「…ぁぅ」


目覚ましの音で、夢から引き戻される。何を見ていたのか記憶も残らない。いつもそんな感じ。だからこれが普通。初めから、この環境が普通なんだ。

洗面台で顔を洗う。冬場なので、お湯でやらなければいけない。


「今日も帰って来ないんだろうな…」


不意に口から溢れる。でも、どれだけ願っても私には振り向いてくれない。兄として振り向いてくれない。私が悪いのかもしれないし、向こうが悪いのかもしれない。

足に冷たい空気が流れてくる。窓は閉め切っているから、どこか開けたのだろうか。しかしどの窓も閉まっていた。

不意に玄関を見る。分かりにくいが、少しだけ開いている気がする。見てみると、鍵は閉まっていなかった。


(強盗でも来たんだろうか)


そんな危機感は無かった。別に今ここで殺されても良いのかも、なんて考えだす。でも、無意味な事は知ってるよ。そんな事でも、悲しむなんて無いから。

少し前に、何か残ってはいないか、部屋に入ってみた。あの性格だから、日記なんて物は無かったし、部屋もぐちゃぐちゃだった。でも、1つだけ。本や書類を退けて、置いてあったんだ。


「自分の部屋でちゃんと寝なよ…、全く」


リビングには、切り傷や擦り傷の痕だらけのお兄ちゃんが居た。安心しているのか、自然と力が抜けてくる。

お兄ちゃんは、自分の傷を何かと隠そうとする。包丁で指を切った事から、深い深い心の傷まで。心の傷は誰でも隠そうとはする。人より何倍も傷が治りやすい体。

だからこんな事は稀だった。自分の傷に気付く余裕も無く、ゆっくりと呼吸して寝ているのは。小さい頃はよく寝てもらっていたが、その時だって寝ているのを見たのは数回だった。


「ん…?」


開いたままのパソコンを覗く。地図が載っていた。それも少し遠めの場所の旅館。前にテレビでやっていた、朝焼けが綺麗な場所。昔、行きたいと言った記憶がある。


「少し遅めの、お年玉かな…」


そう言えば、今年は貰っていなかった。1月は業務が詰まってくると、テレビでやっていた気がしないでもない。こんな職業だから祝日出勤なんてザラだ。

部屋から布団を持って来て、苦しくならない様に静かに掛ける。


「おかえり、お兄ちゃん」

第四章 予測不能のアンノウン

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