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Slave Of The One-Eyes  作者: 軍団長マッスル
第四章 予測不能のアンノウン
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善悪の鍵

「神喰らいの神凪。私達は、我々の計画に必要なパーツとして追跡している」

「テメェの事なんか知ったこっちゃねぇんだよ…!俺の目の前から消えろ!」

「我々がこの道から退いたとして、果たして君は辿り着けるのか?」

「うるさいうるさいうるさいウるさいウルサいッ!!」


暫しの静寂。教祖は聞かれてもいない事を、独り言の様に語りだした。


焔人(カオウ)エスカに伝わる故事。今では昔話として語り継がれている物。その物語の名は、『龍化人愚物語編纂』と言う。人間は愚かで醜いと少子には思われるやも知れない。

だが、真相は違う。なり損ないとは未龍、龍とは神、男とは人類だ。このままでは、全ての人類は未龍となり、果てのない悠久の世界を腐り続け、世界が停止する。我々の望む進化など、到底起こる筈も無い。

平和とは犠牲だ。戦争とは愚行だ。犠牲を起こし、戦争を無くした先に平和が存在する。しかし進む意志が無ければ、朽ちていく運命しか無い。

故に世界は進化を作った。故に我々は神を超えるのだ。少数の犠牲(トリガー)を使い、他を進化させる。数十年周期で繰り返し続け、平和と進撃を続ける事が我々の計画だ。

神凪、フィアンフィオリア、――、ライナーズ、マナシンス。世界を進める鍵として機能するのだ。我々の持っている鍵は2つ。君で1つだ。あと2つを集めれば、君もきっと理解してくれる」


ある単語が、凛の意識を引き戻した。後悔と憎悪に満ちた心が、曇天の様になっていくのが見て取れる。


「――だって…!?」

「君が殺した、アルスファ・オーデインこそが鍵だった。それを君は消してしまったのだ。これがどれだけの恐怖と絶望を産むか分かるまいて」

「だったらその計画は頓挫だな…!」


雨が降り始めた。その音に呼応する様に、今までの言葉よりも、確信と嘲笑を籠めて言い放った。


「辿り着けもしない、辿り着けたとしても、テメェには支配できねぇな…!テメェの言う計画なんてその程度さ。計画を実行できる力も無い、手段も無い」

「怒りに任せた、支離滅裂な言葉だ。…確かに手段は難しいな」


辺りの草花が呼吸を止める。空気が凍り付く感覚がするのに、体全体が焼け付く熱気が押し寄せる。どこかで感じた事のある、経験した感覚。


「一般人としての平均的な能力指数はLEVEL1(平帯)。君達の様な

前線兵士ならLEVEL3(死線)だろう。我々の見立てでは、JOKERはLEVEL5(神破)。そして、神凪や我々は…」


雨水が空中で静止する。いや、教祖を中心としてごく一定範囲が停止している。近付いてくる度に停止していた雨水が落ち、動いていた雨水は止まる。


LEVEL7(超越)だ」


あの時と同じ、あのENFORCERの時と同じ感覚。神を超え、人を超えた世界。感じる事さえ許されざる境地。ENFORCERを全世界と言うならば、教祖は1個体とも言えよう。ENFORCERよりも範囲は狭く、そして濃い。濃縮されたと言われればそうでは無く、その範囲しか許されなかったと感じた。


「最も、それは能力のみを見た結果だ。実際の戦闘では近接、遠距離、知略、起点、能力、運気。これら六天を主として形成される。まだ我々に勝てる未来があるとは思えないか?」


そう言うと、自ら警報装置のレバーを下げた。案の定、警報が鳴り響き、発見灯の光が教祖に集まる。

超越とよく名付けたモノである。その力は光すら捻じ曲げ、未だ停止している雨水にも届かない。ドーム状の暗闇が、その場に出来上がった。

その暗中で、神は言い放った。


「我々は世界の進化と成長を望む。それを善悪で判断するのは勝手だ。だが、邪魔をする様であれば即刻粛清する。

手を上げるなら後に続け。抵抗するなら最期までしろ。

第十二世代保持者、マナシンス・カルマーとは俺の事だ」


暗闇が少しずつ狭まり、最後には消えて無くなった。

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