月下の幼将
何も止めるモノが無い、幽玄の世界。
綺麗な泉と静かな木に囲まれて、パーティを開く。
誰かが足りないような気がする。
じゃあ足せば良いよね。
誰かが邪魔をしに来ている。
じゃあ消せばいいよね。
「…ぃ、ぉ〜い、生きてますか〜?」
目が覚めると、床に転がされていた。背中中砂とか石で痛いが、それよりもグラサンラリアットが痛すぎる。速すぎてその場で下に倒れたんですけど。確実にフルパワーで全力でやった。
「あ、クソザコ巨乳さ――」
何か体が浮いている気がする。完全に今蹴り上げられたのは間違いない。オリジナルなんだからさ、もっと大切に扱ってもらってもバチは当たらないと思います、ハイ。
「で、ここはどこぞ?」
「懲罰房らしいよ」
「罪になる事やってないんですけど」
「ん…、国家転覆罪?」
「ふざけんな」
その後も他愛ない話を続けたが、遂に話す事が何も無くなってしまった。最悪思考も記憶も相互でやり取り出来るから、話す意味も殆ど無い。
およそ10分後、俺を気絶させた張本人が現れた。
「元気そうじゃないか、二人共」
「時々叫びまくる精神状態を元気と言えるか」
「まぁまぁ、俺の巧みな交渉術のお陰で、お前らも俺も生き延びれた。まぁ、アレは相手の懐の広さに依るものかな…」
現在はおよそ3時弱と言った所か。かれこれ20時間くらい外なのか。早く帰らねぇとまた何か言われそうだな…。
「…、」
「取り敢えずここから出してもらいたいんですよ、国家転覆罪とか何とか俺に冤罪掛けやがって」
「あながち冤罪でも無いかもな」
「ぶっ飛ばすぞゴリラ」
粘土質で出来た檻が開く。ウチの懲罰房は、刑務所の下。地下二階に造られている。二階と言っても一階が広すぎるから、普通のデパートとかの地下三階辺りかな。何故地下に作ったかと言うと、掘り進めれば外に出れるが、地形上水分を多く含んでいる。掘れば掘るほど沼に沈んでしまう。それのせいで、常に乾燥機ガンガンだから目が乾いて乾いて仕方ない。
「明日、作戦本部が設置される事が決定した。招集されるのは、各戦闘主任だから、お前とエスカは明日非番だ」
「そもそも俺は休暇中ですよ」
「謹慎だろ馬鹿」
有給って制度を作った奴に感謝だな。働かずに金が手に入るなんてホント神すぎるシステム。俺の為に生まれてきたのか。
「そこの青髪は事務所の床で寝させれば良い」
「扱いが酷くないですかヤダー」
「もう全員家には泊められないんだ。そんなに言うんだったら、エスカの屋根裏にでも勝手に住み着いてろ」
「…そーだ、エスカはどこだ?随分と走り回ってくれたみたいだけど」
「あぁ、アイツなら…そこだ」
事務所のドアを指す。開けてみると、変わらず隊長席に座っていた。深夜だから寝落ちしたのだろう。パソコンが点きっぱなしになっている。
「…ソファにでも寝かせておくか」
「お、どうした?柄でも無く恩でも感じてんの?」
「はい、辛子の刑に処します」
「お前如きの腕力で辛子粉塵が当、タァァ!!」
「手錠掛かってるのによく投げられるね」
「まぁワタクシ、神の如き投球コントロールを才として持ち合わせておりまし、てェァァ!!」
午前3時半に叫びまくった結果、周辺の事務所が防音工事されたのは言うまでもない。
月下の幼将は、穏やかな顔をして、眠っていた。




