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Slave Of The One-Eyes  作者: 軍団長マッスル
第一章 記憶喪失の幼き白銀
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人間様

旧三獄は、歴史的に関わってはこないが、国の経営として重要な役割を担ったらしい。ここには多くの戦争捕虜や仕立て上げられた戦犯等が収容され、無法地帯出身も逃げ出す程の場所だった。そんな場所に未龍が湧く理由は何か。

1つは現在主流の推論でもある、腐敗。未龍は肉等が腐った場所で多く発見され、更に捕食しているとの見立てがある。

2つ目は感情だ。動物や植物が感じる、ネガティブな感情が多くある場所での報告例も多い。


「まぁ、考えたって利益無いもんな」


独り言を繰り返しながら獄内を進む。やはり負の遺産としては残したくは無かったのだろう。肉塊や骨は見当たらない。


「ここかな」


『旧第三地下牢獄B棟』と書かれている。『KEEP OUT』『立ち入り禁止区域』の張り紙だけ新しい。発見に伴う緊急措置だろう。


「ん…」


ドアを開けた途端、未龍特有の腐敗した臭いが鼻をつく。通常の人間なら思わず顔を顰めるが、俺達の様な前線部隊や特殊任務先行の三係以降の奴等は龍狩りを副業として、日々を過ごしている。だが勿論死人が出たりはする。でもやるしかない。この国の給料は歩合制。どれだけ手柄を挙げたか。だからこそ龍を狩る。1番手っ取り早く、即席で稼げるから。


「しっかし、昔より酷くなったな…、水道」


研修生時代に何度か来た事はあるが、その時よりも汚れが酷い。仕方が無い。もう4年も前の事だ。


「あー、汚いなぁ…こんなに成るま、!誰だッ!!」


背後で音がする。咄嗟に振り返ったが、音の主は早々に立ち去ったらしい。水溜りに波紋が浮き出ている。


「おい待てッ!止まりやがれッ!!」

「!」

 

向こうは全力で、それも捕まったらの妄想を行いながらの逃走をしている。そのせいなのか逃げ方に少し怯えが混ざっている。


(未龍ってこんなに臆病だったか畜生め…)

「俺に背を向けるか臆病者ッ!」

「…ぇ?」

「!?」


微かに、だが確かに、今未龍(コイツ)は喋った。聞き間違いなんかじゃない。だからどうしたと思われるかも知れない。オウムやインコだって真似をして鳴く。だがそれは記憶しているだけ。言わばリピーター。だがコイツは、明確な意志を持って返事をした。


「お前が…、はぁっ、目標、物だな…、はぁ…」

「…ぁう…」


ソイツの手を取り、出口へと向かう。俺もエスカも、何か勘違いをしていたのかも知れない。よくよく考えれば、サンプルだからと言って殺す事は―――


「なっ?!」


俺の方の奴(コイツ)は本当に未龍なのだろうか。奴等は死を恐れない筈だ。ましてや同族同士の争いなんてその代表格。なのに、背後から襲われたのにも関わらず、怯えて逃げるなんて…。


「グラガギギギギ…」

「お前みたいな未龍(ザコ)が、何匹居ようと」


未龍が戦闘態勢に入る。突撃か。原始的かつ惨めな手法。


「グギァァァン!!」


すれ違い様に脚を斬る。続けて尻尾を、背骨を、首を落とす。奴の頭蓋に散弾銃を突っ込み、言い放つ。


「人間様には敵わないんだよ」

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