言動の違和感
「…なる程、ねぇ?」
自らの死体を踏み潰しながら、少し荒く降りる。出るタイミングを見計らっていたが、少し遅かった様だ。
「苦悩なんて皆なら解決できる、か。ふっ、少しはマシな冗談が出来るんだね」
心にも無い事を呟きながら、二人が立ち去ったルートを探す。恐らく天井からの逃走だと考えられる。5mくらいなら、一人が登った後にロープで引き上げれば良い。常にロープを持っているのを知っているから考えられるルートだ。念の為他のルートを考えるが、この部屋にはドアが無い。破壊されていないのを確認して、天井の穴から上の階に登る。
ここからは簡単だ。何の為に血を撒き散らしたのか、その場で気付ける訳も無い。
「勘が鋭けりゃ気付けたのにねぇ…!」
視認など到底出来ないスピードで、追跡を開始する。教祖や水鳥に任せる程、詰めが甘く育てられた記憶は無い。
「出口はどっちだ?」
「…あっち」
ショックで精神にまで来てるかもしれねぇな…。少し幼げな滑舌になっている。餓鬼は嫌いだって言ってるのに立て続けに来るとキレそう。て言うか泣きそう。
「おやおや。私との契約を蹴ってまで、その男に付くかENFORCER」
「…水鳥か。その節はどうも」
「凛君も揃っているとなれば、話は早い。私達と共に来てくれぬか」
「…」
「忠告だ。…今すぐそこを退け」
敵対心を剥き出しにし過ぎたのか、呆れた様子でこちらを見ている。
「なに、君達に直接害を加えようとするつもりは無い。ただ、この場では従った方が良いと思うぞ?」
「知らん。お前ら程度に何が出来る」
「…来たな」
「あ?」
水鳥が虚空を見つめる。違和感など何も感じないが、気でも狂ったのか。時代遅れの白熱灯が点滅し始める。それに呼応するかの様にENFORCERの目に焦りが浮かんでくる。
「囮か…!」
「何を言って――」
反応出来る筈も無く、左肩の関節に刃を滑らされる。刃が体外を向いているのが唯一の救いだが、左腕に力が行き渡らない。骨が外されているのか。
「正解で〜す♡」
「テメェッ!!」
振り払う前に、そのままの向きで切断される。辛うじて繋がっているが、少し暴れれば簡単に飛んで行きそうだ。
「なる程、さっき斬られたのは囮って事か。自動で動いてくれるなんて、楽な物だな…!!」
「アナウンスに惹かれて、ここまで来た自分に後悔してね」
「アナウンス…?」
「テメェ程度に俺が殺せるかよ餓鬼」
先の囮とはレベルが違う雰囲気だ。もっと純粋な異常者とでも言おうか。あの顔を見たら良く分かる。殺す事に対し快楽を感じるなんてな…。
「水鳥…。何をしようとしていたのかな?」
「いや何、有効活用できそうだと思ったまでよ。情けなぞ、懸ける事も無い」
「…じゃあ手は出さないって事ね」
「どうだか」
険悪そうだが、空気が悪くない。恐らく違っているのは言葉の上だけだ。あの化け物ですら分が悪いのにな。
「どっちからが良いかな…。ライナーズから殺そうか」
「選択コースじゃねぇんだぞ…」
「良いねぇ、久々に昂ぶるよ。考えるだけで濡れてくる…」
「ENFORCER!いつまでも呆けるな!」
「…やだ」
役立たずが…。何で勝算なしにあんな発情サイコと殺し合わなきゃいけねぇんだよ、クソが。
「大丈夫だよ?死んだ後に好きなだけ犯させてあげるからね?」
「それなら――」
恍惚に浸るJOKERの背後から、見慣れた紋章を付けた(ゴリラみたいな)腕がJOKERの腕を掴む。
「生きてる内に犯しても問題ねぇよな?」




