自己破損
腕あたりは勝手に修復されるから良いとして、問題はここから出る方法を探さなければいけない。ついでに別室探しも兼ねて、だな。さっきのゴミ教祖は消えたし、粗大ゴミと一緒に過ごすなんて絶対に嫌だ。
『あー、あー、聞こえますか〜?』
「ん?」
急にスピーカーから音が鳴る。音が彼方此方で反射しているのを聞くと、恐らく全体放送なのか。
『命令を下します。現在、第13番が暴動を起こしていま〜す。現地の方々は速やかに、処分お願いしま〜す♡』
「…気持ち悪いし、気分最悪」
人の声みたいだが、どこか機械風だったな…。まぁ良いか、どうせその13番って白い奴の事だろうし。俺は暴動じゃ無くて見世物ですからね。…あー、キレそ。
「取り敢えず、人混みの中にでも入って、探すついでにアイツも見付けるか」
でもその肝心の外に出る方法が無い。右腕は後数分で、表面だけは直りそうだが。携帯は圏外では無いが、盗聴されても嫌だし何より頼りたくない。どうせ後から見返りPLEASEだからな。
「換気扇か…」
無茶なのは知っているが、唯一の出口だからなぁ…。でも巻き込まれたらいくら俺でもハイ、サヨナラだからなぁ。まぁ、グダグダ言わずにやってみるか。百聞は一見に何ちゃらって言うし。
壁に剣を突き立て、持ち手にロープを括りつける。コレで踏み台にしても持ち手だけは回収できる。刃は知らん。
「いっせぇの、せっ!!」
何か下で刃が折れた音がするが聞こえない。て言うか聞きたくない。点検用に付けられたであろう梯子に、ギリギリ手が届く。刃の部分が折れた(様な感じのするかも知れない印象を受けた様な…)柄を引き上げる。ノールック納刀して、梯子を登っていく。換気扇が綺麗な所を見ると、掃除したのは最近らしい。
「さて、どうしたら良いのやら」
ここまで登ってきたけれど、換気扇の開け方とか落とし方とか趣味とかは全く知らない。ただ、無闇に開けたら扇風機みたいにハネが飛んでいくのは容易に想像できる。しかも、これも巻き込まれたらあの世へGOになるだろう。不便な体だ。
「時間逸脱を使えれば逃げれんだけどなぁ。観客居ないせいで無理だしなぁ」
発動条件としては位置指定の他に視覚情報と音が関係してくる。目に見える場所や、完全に記憶している場所などは別に問題なく飛べる。だが、それが無い場合に頼るのが音である。音の響き方や減少速度で空間を割り出して、更に移動座標を決めれば飛べる。クリック探知の劣化版みたいな感覚で良いと思う。何故場所を決めなければいけないかと言うと、壁とか天井とか物とかに位置が被った時に、悲しい事になってしまうからとでも言っておこうか。
「少々手荒にはなるが、手榴弾でも使お」
何かの拍子に暴発しないように設計された旧型爆弾。威力控えめとか書いてあるけど、そんなカレーの辛さみたいな表示で良いんだろうか。
「ホイッと、……。爆発s」
一拍遅れて爆発するから少々驚いてしまった。落ちなかったのは幸いだが、代わりに爆風の余波に巻き込まれた。辛い。
「取り敢えず、逃げるとしますかね」




