異常性
「くッ、…ぁう」
まだ体が痺れている。しかし、腕や足に拘束が無い。更には武器の没収すら無い。こうなると余計に疑ってしまう。暫く経てば、万全になる程度の麻酔を使うのもおかしい。やはりハメられた可能性が高いな。
『目が覚めましたか?凛・ライナーズ』
「…俺に何をさせる気だ」
『賭け、と言ったでしょう。今から私達は賭けをするんです』
突然、向かい側の門が開く。物凄い量の蒸気が噴き出し、一帯が灼熱と化す。蒸気の主が見えない以上推測でしか無いが、恐らく…
「第4世代殺戮兵器、通称クロコダイル」
『そのType2です』
確かに第1世代や第2世代は、恐らく単独破壊は出来そうだが、第4世代にまで達するともう手遅れだな…。どうすれば良いのやら。
「どちらか勝つ方に、貴方と私が賭けるんですよ。さぁどちらに賭けますかな?」
性格が悪い教祖様やな…。俺に賭けるしか選択肢は無いだろう。アイツに賭ければ俺が死ななきゃいけないからな。クソッタレ…。
「キュゥグアアァァァル!!!」
「ッ!、来るか!」
金属とも生き物とも思えない轟音を上げながら、自身の拘束具ごと蒸気で吹き飛ばす。辺り一帯が熱気に包まれ、夏場のたこ焼き屋の様に視界が揺れている。体長は大体30mといった所か。先のヒューマノイドよりも機械チックな見た目をし、名の如くワニの骨格をベースにしている。
蒸気は恐らく、保湿と対生物用に搭載されている可能性が高い。一応、アレはアンドロイドタイプでは無く、サイボーグタイプだからなのか。
「でぃアッ!」
斬りつけた所で傷一つ付かない。本体を覆っている装甲の表面が流動しているのを見ると、純金属多次元装甲と言った所か。傷が付いた瞬間、その部分を別次元から持ってきて修復する、言わば無限再生。
「反則だろそんなのッ…!!」
「最悪の殺人鬼でも、こうなってしまえばお終いですね」
「黙れ教祖ッ!まだ終わんねぇぞ…!」
その言葉の直後、左足を吹っ飛ばされる。極度の興奮状態故にか、痛みは感じない。ただ死ぬかも知れないと言う恐怖と、それに勝る闘争心と復讐心が混濁している。
「足一本飛んだからって、俺が死ぬとッ、思うか!!」
飛んだ足を力づくで接合し、立ち上がる。無理に立ち上わがったせいで、断面から血が溢れてくるが、流血はそれ程でもない。しかし体力を奪うには十分流れている。
「あの装甲を破壊できれば…!装甲さえ吹き飛ばせば…!」
瞬間、一つの考えが浮かぶ。完全な機械型にしなかった、相手側の作戦の穴を突く作戦が。
装甲の位置を確認する。そう、全てが装甲とは限らない。中世の甲冑や、日本の鎧などを見ても、関節部分は開いている。勿論、コイツは兵器だ。そんな弱点はとうに克服している。では、何を突くか。
金属とは、現世界において重要な役割を持つ種類の鉱石だ。しかし、どんな硬さや特異性を持っていようが所詮は万物の一端。形状変化には耐えられない。固化、液化、気化、昇華。金属も流れには逆らえない。
「どんな手ェ使われても、非難できる立場にねぇよなぁ!化け物野郎!!」




