L型201859号
「この奥に、教祖様がいらっしゃる」
「はいはい、そりゃどーも」
豪華で不格好の門を潜り、白いカーテンの前に来る。人の気配なんて微塵も感じないが、裏側を捲ってはいけないらしい。
「ようこそ、迷わぬ狼。態々ここまで足を運んで下さるとは、何事ですかな」
「…呼んだのは、そちら側だと思いますが?」
「聞かれていた事は判っています。しかし戴けませんな。これは犯罪では無いですか?」
「犯罪だとして、アンタにどれだけの証拠がある?証拠も無しに人を疑うなんて、教祖様のやる事じゃ無いぜ?」
暫くの沈黙が流れる。相変わらずカーテンの中から出て来ないが、本当に居るのだろうか。
「あの白い奴はどこだ?」
「あぁ、ENFORCERの事ですか。彼女なら、今は楽しく別室行きです」
「…どこにあるんだ」
「貴方の様な狼に、知る価値はありません」
「教えろって言ッてんだよ役立たず!!」
護衛が警戒態勢に入った。少なくとも自主的には襲ってこないが、来られるとマズイかもしれない。無駄に強そうな人間も多いしな…。烏合の衆とも言うし、数撃ちゃ当たるとも言うし。
「…時間だ。引け」
無理矢理退室させようとする護衛を振り払う。少なくとも、場所くらいは聞き出さなくては。アイツが居ないと、無事に家まで帰れない。
「どうしても、言わないんだな」
「知った所で、結果は同じです。彼女は、足りない器の代わりとして用意したのですから」
器…。前に逃げた男の方が言っていた、進化と関係があるのだろうか。いや、あり得ない。進化としての器なら、説明的に全生物になる。詰まる所、必要なのはトリガーだ。入れ物じゃなく、鍵だ。
「彼を、地上スペースへと案内してください」
「ハッ」
「ちょっと待て、そこで何しようってんだ」
「会わせてあげますよ。賭けに勝ったらね」
その瞬間、腕に何か打ち込まれた。最初の方は動けたが、徐々に動きが鈍くなり、意識までもが遠退いていった。
(私達は、物凄く似ている)(お子さんは、重度の)(信用なんて絶対にしない)(所詮、人殺しの戯言よ)(時間が戻れば良いのに)(偽善などに意味は無い)(神に近付くということは)(責任くらい負えないの)(虐待なんてして無い)(嘘を実現できるのが英雄だ)(特別が普通なんだ)
(未来は貴方が思っている程、幸せな世界じゃ無いの)




