鍵
「ふぅ…、しつこい奴等だなホント。そんなんだから皆童貞なんだよ」
「人の事言えませんよね?」
「黙れ」
初対面の癖に随分とズケズケ言ってくる奴だな…。少し苦手。
「で、奴を何で知っている。しかもジャックと天廻に聞くって事は、俺と繋がっている事を知っていてあえて聞いただろう」
「それは機密事項なので。個人的にはお話したいのですが、調べていると言う事を知られたとしても、内容までは教えられません」
機密事項、よく使う逃げ口だな。俺も使える立場になりたい。…多分、無理だけれども。
「じゃあ次だ。ENFORCERとかBREAKERってのは何だ?JOKERと同じような物なのか?」
「あら、ご存知なかったのですね。危険人物のCODEですよ。彼女も私も、そして貴方も」
…危険人物?JOKERや俺はともかく、コイツはそんなに危険そうには…。
「えぇ、私と貴方とは危険度が違いますから」
「…それはどっちの意味で?」
「ふふっ、秘密です」
何か怖いんだけどコイツ。さっきから武藤の事とかアイツの事とか、色々と知り過ぎなんじゃねぇの?
「そうだ、特使のパスポートは?ちょっとだけ見せてくれないか」
「それは…」
…やっぱりか。特使なんてのはその場の思い付きか、または本名見せたくないか、まぁどっちにしろ怪しいな。
「無断入国してきたのかよ…」
「まぁ、そう言われれば…、そうなんですけど…」
「まぁいいや、俺の用は済んだ。後は一人で用済ませて帰りな」
「そうします」
そう言うと、席を立ち玄関から出ていった。
「やっぱり、か…」
この事務所は、事務所兼軟禁用の部屋として使われていた。基本、外からはパスワードと鍵が。内側からは、パスワードかカードキーでしか開けられない。閉める時も同様だ。
先程俺は鍵を閉め、確認はした。外側と内側のパスワードは違う。つまり、今のアイツの行動は不自然だ。自分では開けられない筈なのに、開けて出ていった。エスカや武藤が、パスワードを口外していなければ、開く事は不可能。律儀に鍵も掛けてってやがる。
「要注意って意味が何となく分かった気がするな…」
外からドアを叩く音がする。ここまで追い詰められたら、もう詰みだ。大人しく投降するしかねぇな。
「はいはい、大人しくしますよ」
「対象、捕縛。…はい、速やかに移送します」
何かしらの罰は下るだろうが、…さぁ、何を寄越してくるだろうか。




