第一世代殺戮兵器
「すみません、ここさっき通ったけど」
「そんな事ないよ。ほら、ここの電灯点いてるし」
「嘘付け!さっきもそう言って同じ場所だっただろ!」
「五月蠅いなぁ。元を辿れば構造覚えてないのが原因なんだよ!」
「だって覚えた所で出れる訳ねぇじゃん」
「ゴキブリ未満のクソザコナルシストめ…!」
「おうやんのか誇れんのが胸だけのロリコン女!」
冷静に考えたらこれ一人漫才みたいだよな。二人でやる一人漫才ってちょっと悲しいな。
「もうこれ窓割って外出たら?」
「それしかねぇかな…」
こう言う施設の窓は防弾耐熱だから素手じゃ無理そうだが、さてさて如何なものか。
「能力で吹っ飛ばしたら良いじゃん」
「馬鹿だねぇ。窓枠とくっついてんだから無理に決まってんじゃん」
「じゃあ私がやるよ」
「無理無理、俺のコピー品やぞお前。そう簡単には吹っ飛ば――」
最後まで言う前に真後ろで爆発が起きる。背中とか顔とかに硝子が凄い飛んで来るのは、意図的にしたんでしょうかね。(ふざけんな)
「ほら、壊れた」
「お前シバき倒すぞゴミ野郎。俺を巻き込んでどうするんだよ」
「ま、生きてりゃ丸儲けってね」
「身売りさせんぞ」
破壊した窓から表へ出る。が、何かがおかしい。どうやら表じゃ無くて中庭みたいな所かな。
「出る場所間違えてんじゃん」
「そこまで責任持てないしー」
「中戻ってさっさと出ようぜ」
割った窓からは無理そうだ。登るのがしんどい。建物内に入れそうなドアを片っ端から壊す。
「ん?このドア硬いな。おいちょっとここ爆――」
だから言い切る前に爆破するなイカれクソアマ。凄い体に悪そうな空気してるけど、ホントに大丈夫な能力なんだろうか。
「生臭っ」
「そりゃあね、こっち生物実験区域だから」
「何でそれを言わずにさせたのさ!」
「いやぁ、少し興味あったんで」
「だからって化け物居るかも知れない場所を開通させんな」
こっちの意識上に無かったらアイツも分かんねぇんだな。勉強になりました。
「あ」
「へ?」
「ごめん、それだと変な風に取られかねない」
「後ろ?誰も居ないけど」
凄い呆れた顔で上とか後ろとか指してくるんだけど。後ろにも何も無いじゃん。なんか凄い引き摺った音がするだ…け?
「やっべ、やっちまったZE」
「ちょっと何落ち着いてんの!?さっさと逃げようよ!」
「いやーだってさ。ここの施設のドアハリボテなんだもん。逃げるルートはあのヤバそうな場所だよ?」
どうして外と内を見定めなかったのか、今更後悔しても遅い。だったら少しでも生き残る可能性を見付けなければ。
「そうこうしてる合間にお出ましだぜ…」
ソレを見て誰もが感じる印象は、気持ち悪いかグロテスクしか無い。体の大部分が人の頭で構成され、所々から体本体や手足が生えている。幸いにも、歩行には生えた常人のような手足で行なっており、鈍いと言えば鈍い。
だが、もう一つ懸念する事がある。それは、ここが何に使われていたかだ。
「第一世代殺戮兵器。通称ヒューマノイド…」
「だろうな、資料や噂にそっくりだ」
「だったら他の兵器も…?」
「それは無いな。プラナリアは勿論、スパイダーとスネイクも全機体回収、破壊済みだ。第二世代以降はまだだが…」
少しずつ後退れば気付かれず、更に距離を取れる。あまり目や耳は良くないようだ。このまま刺激せずに待っていれば、あのドアから逃げられる…。
「もう爆破しようよ!こんなのが居たらおかしくなっちゃう!」
「止めろッ!爆破したら駄目だッ!」
「どうしてさ!」
「奴の体を見ろ。どうしてあんなに膨れてると思う?」
奴の内部は殆どが人間と同じだ。動物は雄と雌が居れば何匹にも増える。だが奴は違う。雄も雌も関係なく適当にくっつけた結果、1個体だけで繁殖が可能となった。その繁殖方法はホウセンカなどと同じく、炸裂して着種した場所から生えてくる。生物として欠陥品であるが故の方法だ。
「つまり、お前がいくら爆発で粉微塵にした所で、全個体を排除するのは不可能だ。全個体を殺すには、全身冷凍か酸で溶かすしか無い…」
「ふざけやがって…」
やっぱり根は俺なんだな、すぐ諦めんのは。




