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Slave Of The One-Eyes  作者: 軍団長マッスル
第二章 精神異常の関係者
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リバーシブル

「な…、あ…」


人間は本来、自分の事を最優先に行動する生き物だと思っている。だから余程追い詰められなければ、自害なんてしないと思っていた。だが、間違っていた。コイツは、自らなど道端の小石と同じ存在としか見ていなかった。


(いずれ理解しなければならない時が来る。それまで、精々足掻いてみせろ…、ハッハハハハハ…)

「煩い煩い煩い煩い煩いッ!!ぐッ、はぁ…はぁ…ッ」


心の中で、感情の暴走が起きかけている。鎮めようとする努力も、全て無駄に終わる。その時、脳内に言葉が過ぎった。


『○▼※〒→ダ』

「ミナゴロシだ…」


その言葉に反応したかの様に、相手は距離を置く。だが、それは無意味に終わる。人間は、意外と頑丈に造られている。マンション6階から飛び降りようが、トラックに跳ねられようが、原型は残るし生き残る。

それを考えれば、少し無理したって問題はないだろう。資料が詰められた棚を思いっきり蹴飛ばす。地面に固定されていない棚は、容易くでは無いが倒れ始める。危険を察知して避ける体勢に入る。だが奴は間に合わない。いや、間に合わせない…!


「知識の味をしっかり味わいな!!」


更に近くの本を投げつける。ワザと左右に外して本体を逃げられなくし、その上で膝の上辺に打ち付ける。


「あ…」


体勢が崩れたのを確認、一気に加速する。相手の鳩尾上に膝蹴りを喰らわせる。相手の落下と、自身の加速により通常よりも威力が増大する。


「今ので…、胸骨体にヒビか。面倒だ、その無駄な胸のせいで一撃とはいかないのがな」

「無駄なんかじゃない。それに、気にするのは自分の方が良いと思うわ」

「…チッ。グッチャグチャだな、言葉が」


人体改造のお陰で、言語能力がイカれてやがる。戦闘用には造られては無いな。それでも普通よりはおかしい身体してやがる。骨と肉の衝撃吸収能力が物凄く上がっている。それでいて耐久性もある。


「…サーペントみたいな身体の構造だな」

「サー…ペント?あぁ、あの失敗作か」

「失敗作はテメェだ、ガラクタ」


サーペントをモデルにしたとしたら、少なからず自己修復機能がついている筈だ。あの殲滅兵器の後継機なんざ認めたくないがな…!


「どちらにしろ、殺さないと厄介なのは変わらないな…」

「殺すしか選択肢を持てない様な人間だって、記録には無いけれど」

「テメェが俺の何を知ってる」


本当に人の精神を逆撫でする様な奴だ。こんな奴を造った外道らも絶対にイカれてやがる…。


『精神エネルギー、規定値をオーバー。直ちに修正してください。繰り返します。精神エネルギー、規定値を…』

「くッ、俺に指図してんじゃねぇ!このガラクタがぁッ!」


その言葉を言い切る前に、地面に叩きつけ踏み壊した。いつの間に持たされていたのだろうか。その光景を見て、奴は何故か不思議そうな顔をしていた。


「…対象の思考回路へのハッキング不可。思考回路が根本から歪んでいるの?」

「俺が正常なんだよオンボロ。異常なのはお前らだ」

「考察データを送信。事実との合致率、推定98.1%。対象の回収を実行」

「機械なのか人間なのか、ハッキリしたらどうだ」


奴の破壊の前に、データと送り先を見とかないとな…。面倒くさいなぁホント。


「じゃあ、再開しようじゃないか」


点火しながら、発煙筒を思いっきり叩きつける。煙などお構いなしに突っ込んでくるが、全て読めている。不安定な足を払い、その加速のままかかと落としをする。しかし兵器の名は伊達じゃない。払われた反動を利用し、下から腕を使い飛び上がってきた。当然避けれる訳も無く、仰向けに倒れてしまった。


「やっぱり破壊するには惜しいぜ、お前」

「破壊じゃなくて殺すんじゃないの?」

「俺がそんな物騒な事を言うか?普通よ」


それにしても、周りが静かだ。おかしくないか?こんなに音が鳴りまくってんのに…。


「まあいいか。気にしすぎても無駄…か」

「いいや?無駄じゃないさ」


振り向こうとした直後、腹部に痛みが走る。大きくは無い、だが動けない。刺されたのも気が付けないほど、痛覚が麻痺していたのか。

   

「良く働いてくれた。感謝するよReader君」

「ご命令のままに」

「あ…うッ、貴様…!」

「ふむ…、やはり君の推論は正しかったようだな」

「推論だって…?じゃあ送り先は―」

「私だ。そして、そこの者たちを処分したのも私だ」


処分だと…!そんな事が、さも当然の様に言いやがって…ッ!


「安心しろ。すぐに何も考えなくて済むようになる」

「コロしテやル…!そノ身が続いテいけルと思うナよッ!」


急に足に力が入らなくなる。倒れるのを防ぐ手も出ない。意識が遠のく、いや、意識が飛んでいく感覚が身を襲う。


「…用は済んだ。撤退する」


眩しい閃光と共に、意識が完全に途絶えた。

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