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Slave Of The One-Eyes  作者: 軍団長マッスル
第九章 反復記号と複数線
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略奪する本能

「イス…ト」


痛みを必死に堪えながら、ぎこちなく笑おうとしていた。急いで抱きかかえて、やっと気付く。


「イスト…、腕、は…?」

「失敗、しちゃったかな…はは…」


左腕が、二の腕の真ん中から無くなっている。切断面は、まるで火傷したかの様に焼け焦げ、出血すら出来なくなっていた。


「…、役目は終わったみたいだな」

「役目って、何なのさ…!!」


その言葉を聞いて、まるで興味が無くなったかの様に、切断された腕を踏み潰す。暗がりでよく見えなかったのが、せめてもの救いだった。


「蛇に喰われる前の蛙なんだ。このまま放った方が、俺としても無駄にスペアを消費せずに――」

「煩いッ!!」


もはや正常な判断は不可能だった。

五体満足で動く体に憎悪すら覚えた。

だって傷付くのは私の役目なのだから。

あの娘達を護るのが私の役目なのだから。


「その表情、あまり良いモンじゃないな」


そう嘲笑いながら、沈黒の中に(アニムス)は融けた。


「ッ、おいヨナ!治せるか?!」

「…、まだ繋がってる。これなら治――」


息が止まる。いや、止められた。喉に何か、冷たい金属の紐が巻き付いているのか?そうだとしても誰…、が?


「くッ…、早―離…て…!」

「鎖…?イス――」


目の前で始めて理解した。この首を締めているのは鎖なのだと。締め付けは強くなるのに、殺そうとする意識がない。


「ごめんね…、加瀬さん」

「鎖の…、使用権限は…?」


「ありがと、ここまで…連れてきてくれて」


開き続ける金属音が、その瞬間停止した。

それが何を示すのかが分かる。

それで何が起きるのかも分かる。

本能的には分かっているのに、理解を理性が拒絶する。


「次の目覚めは…、綺麗な朝日なんだろうなぁ…」


脳に酸素が回らなくなっている。

そうして薄れゆく視界で、最後に見たのは


―これでもう、苦しまなくて済むよね。


そう笑いながら、一度。

彼に別れを告げなかった、後悔と安堵の顔だった。

「…」

「状況は?」

「…さて。停止信号までの防壁が厚すぎる」


このタイミングで寄越したって事は、向こうはカタが着いたのか。…それだったら、青髪じゃなくて本人が来た方がよっぽど役に立つんだが。


「システムの弱点は判るんだが、…如何せん文字が読めなくてな。停止信号どころか強制停止すら使えない」

「…確かに、こんなシステム言語なんて有ったっけ?」


ただ、この形式の文書は見た事がある。セレナがよく使ってた慈眼結界と同じ文言。流石に並びは違うが。


「…調べた所、このシステム防壁は全て東洋式の結界文書だ。で、物理防壁の方は多次元流体金属製の水圧型。

どちらも突破するのに時間が掛かる代物なんだが――」


音が消える。目を閉じていても感じる強烈無比の光。熱風とも言える、背筋を抜き折る様な悪寒。


「物理防壁が、なんだって?」


目を開けると、まるで原爆の様な爪痕と、臨界事故の様な青白い光が、壁に焼き付いていた。


「焦げない様に結界張ったんだから感謝して」

「マズイ事だな…」

「?」


強力無比な能力なら、他にも無数にあるだろう。時間停止や強制即死、精神操作や不老不死とかだ。

だが、それは強力無比なだけであって、目に見える恐怖にはならない。精々絶望するくらいで済むだろう。


そう、目に見える恐怖となり得ないから。


「この威力以上で使った時、あるか?」

「いいや?こう言うのは、局所的に集中してやる物だし」

「今後、偽装できる時以外はやめろ」


民衆に物理的恐怖を抱かせる事は、決してしてはならない。ましてやそれが、自分達を護る者が行うなど言語道断だ。


「先にアンタに見せといて正解、だね」

「凛じゃだめなのか?」

「民衆を巻き込まない程度に最大出力、だろうね」


そう考えるのも、無理はないだろう。考え方の違いだ。民衆を優先した後、敵を排除するか、味方を保護するかの違い。

ただそれだけの事だ。だから俺はアイツを否定しなかったし、アイツも俺を否定しなかった。


「で、この後どうすんの?」

「リミッターを全解除して、熱感知でシステムダウンさせる。最悪それで止まらなくても、ここが吹き飛ぶだけで済む」


実際は制御棒さえ抜ければどうとでもなるのだが。それをすると、恐らくシステムダウンどころかメルトダウンして、ここら一帯が不毛の地になる。


「随分と、回りくどい手段だな」


主電源―未装填

制御棒―安定

凍結界―安定

防衛機―待機

核燃料―安定


―全システム、臨界突破(オーバードライブ)


「よし、早く逃げ――」


―管理者権限、承認

 システムの再起動を開始

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