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Slave Of The One-Eyes  作者: 軍団長マッスル
第九章 反復記号と複数線
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真偽の意

こうやって人を殺したのは、2度目だ。

あの時とは、人も場所も違うけれど。それでも私は、貴方を殺した。今、ここで。


さようなら、誰かさん。

せめて、その刃を突き立ててくれたなら、

私は、罪を償えたのだろうか。


「―ッ」


…まだ息が残っている。

その顔を見て、全身の血が引いていくのが分かる。

だって、私は貴方を捨てたのに。

アレがデバイスだって事は()()()()()

あの思考が深層心理のモノだとも知っていた。

だから私は、貴方を捨てたのに――


「嫌……、こんな…」


倒れ込む体を引き寄せられる。白く濡れた服に、赤黒く滲んでいく。傷口からは血が常に流れ、それを見て一層心音が高まってしまう。

視界が雨で歪んでいるのか、近くにある筈の顔すら見えない。思考を全て飛ばさなければ、保つ事すら難しい。


「…、気は済んだか?」

「ぇ…?なん、で…?」

「内臓開けられたくらいで、オレが死ぬ訳ゃねぇさ」


見下す様に、諭す様に、その言葉は投げかけられた。

その痛みを受けても尚、その心象に悪意は無かった。

私がどれだけ傷付けても、その返答は変わらない。


人々(お前ら)を護るのが、オレの仕事だから、な?」


もう少し、このまま寝てしまおう。

そうすれば、朝には全てが戻っている。


私が愛せなかった平穏も、貴方が遺した約束も。

手を伸ばせば、いつもそこに居た。

いつも、私を助けて愛してくれた。

誰よりも、自分よりも。


だから怖かった。

喪った時の感情を、知ってしまうのが怖かった。


そうやって逃げても進めないのは知っていた。

でも、そうするしか無かった。


誰もが私を護ってくれるのに、

誰も理解をしてくれなかったのに、


あの人だけは、理解してくれて。

あの人が一番、護ってくれなかった。


「総長。全軍収集、及び戦闘配置完了。指揮を」

「…分かった」


自分達がどれ程の罪を被ったか、そんなモノに思考を費やす余裕などない。だから、この戦いに意味なんて見いだせない。でも、それでも私は、自分すら殺してでも望みを果たす。


誰もが幸せになる世界なんてないなら、

せめて、誰もが傷付かない世界を作る。


「今日の総長も、えろぅ美しかったなぁ」

「アレでいて14だとは、女の歳ってのは判らん」

「だからモテるんだろうなぁ。…主に女性陣に」


「総長さん、今度花見にでも行きません?」

「ッ…、ぁ、いや。遠慮する」

「え〜、行きましょうよぉ。良い場所見つけたんですよ」

「…だから――」


勢い良く開くドアに、全員が釘付けになる。静寂なのか良く判らなかったが、その場が静まり返ったのが分かる。

そして大体こんな時に来るのは…。


「良いじゃないか、花見」

「…、でも…」

「副長じゃないか。お〜い、副長が帰ってきたぞ〜!」

「副長、ドアは蹴る物じゃないっスよ…」

「副長も行きます?花見」

「あぁ、そうだな。行かせてもらう」


不満そうに睨みつけても気付かない辺り、ホントにただ花見がしたいだけな様に見える。


「じゃ、行くんだったら仕事片付けて?」

「…仕方ないな、先行っといてくれ。後から行く」


誰もが私を好いていた、らしい。

その事実に興味はないし、意味もない。

だって私には、約束があるから。


私を殺してでも叶えなきゃ、約束破りだから、ね。

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