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Slave Of The One-Eyes  作者: 軍団長マッスル
第九章 反復記号と複数線
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凶津星

「ん、新聞か」

『丁度良いや、それで時間見てよ』

「…図書館の新聞って、たまに遅れてるからなぁ」


図書館、なんて言っても殆ど遺跡みたいなモンだからなぁ。司書がいない時点で、結構ヤバいな。掃除はされてるみたいだけど。


「え〜と…、『2035.1.2』最近のだな」

『…あんな被害出てたっけ?』

「確かに、OIL AIRSの使用履歴の内、戦闘に使われたのは2回。それも昔の事だ。しかもこの新聞、」


手を伸ばしてみても、虚空を掴むばかり。つまり、これは正史だ。この記憶はENFORCERのモノとは認知していたが、まさかここまでとは…。


「何か、隠蔽工作が働いたか?」

『…あの跡地を見て、そんな事が言える?』

「だよな…、て事は」


あの跡地こそ偽りなのか?だがそれでは、あの住民達の設営地はどう説明する?何から何までおかしい。

まるで、過去も現在もまとめてかき混ぜた様な世界だ。


―モ…良イ

「コイツは…」

『…』

―…ンナ茶…ヲ…ル為ニ、オ前ヲ……タノデハ……


周りの物体が、少しずつ粗くなっていく。窓枠、文字、本棚。まるでモザイクが掛けられている様な見た目。


「…どうなってる」

『…ENFORCERの記憶内だと仮定するならば、その記憶を自分自身で消去してる可能性』

「出口は?」

『記憶内のENFORCERに何かしらの衝撃を与え、トラウマの要領で記憶を引き出す。そうすれば、記憶内に断層が発生するから、そこを利用して外に出る』


郷の人々も粗くなり始めている。

探している時間はない…!


「…やるしか、ないか」

『断層が出来たら言うよ』

「頼む」


俺達が精神体として活動している以上、与えられる影響は精神的なモノのみだ。なら、それを広範囲に、かつ爆発的に一瞬で広げる。


―我は七天の反逆を持ち、

 その契約を満たさん事を

―我は八苦の洗礼を持ち、

 その成約を成就せす事を

―生は死を以て証明し、

 死は生を以て秘さん

―露結、焔陣、嵐流、乾成

 その全てを、我が天雷が須く


―雷撃昇・総天


天の光を見た。

空に掛かる橋よりも、

星を繋ぐ線よりも、

私は、その光に魅せられた。

だけど、その光は凶星。

全てを、私を不に落とす魔光。

それでも良かった。

純粋で、唯一つ叶えられなかった願いを、

その凶星は見せてくれたから。


『行ける…、そこで待っててッ』

「了解…!」


その言葉の直後、身体が浮いているのが判る。馬鹿力で蹴り上げられたのだろうか。背骨が曲がっている。


「…封印は、解かなくて良かったのか?」

「少なくとも、良くはないだろうね」


自らの、彼女の約束を。


「…殺らなきゃならないのか?」

「…そうなったら、私は凛だろうと容赦しない」

「…そうか」


むしろ、それで良いかもしれない。

そんな事を思っていながら、


「殺ってみろよ、できるならな」


心はどこまでも、淀みきっていた。

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