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Slave Of The One-Eyes  作者: 軍団長マッスル
第九章 反復記号と複数線
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身を灼きぬ、

私は彼を愛していた。

彼も私を愛していた。


それは純粋な親愛から来るモノなのか、

その頃の私には理解出来なかった。


でも、1つ分かる事は、

私が私でなければならなかった。


誰かに助けられ、

誰かに護り抜かれ、


そんな無力な私でなければ、

私を愛してはくれなかった。


「やっと、()()()()の再会だな」


…何を言っているのだろう。

まぁ、良いか。

彼が私を認めるまで、


私は、何度でも穢れよう。

何度でも、人間(貴方)を殺そう。


「無反応、って訳でもなさそうだな…」

「…まだ怪我が治りきってない」

「そりゃあ、人ならしょうがないだろ」

「いや、ちょっと前までは傷なんて1個も無かった」

「…いや、今回ばかりは俺の読み勝ちだな」


傷、と言っても色々ある。切傷、摩擦傷、打撲傷。そして、傷の付く過程。他人から、自然物から、無意識から。

だが、あの傷は恐らく…、自傷。それも裂傷だ。

爪に着いている血液も、自分のモノだろう。


「…れ?」

「錯乱してるな」

「止められるの?」

「…止めないと、俺ら死ぬだろ?」

「言えてる」


光の塔が、ENFORCERに呼応して、その姿を変えていく。淡く光るその塔が、まるで生き物かの様に、そのまま呑み込まれた。


「何だ…?ここは」

「こんな事出来たっけ…?」


荒涼とした大地が、まるで爆撃を受けたかの様に焼け焦げている。焦げた匂いを纏わせながら、春の空気が辺りを舞っている。


「で、何だここは?」

「ENFORCERの記憶にある、最も印象的な情景」

「…何で知ってるんだ?」

「イデアシアが作った装置に似てるんだ。コレ」

「まぁ、こっちは魔術な分、…面倒だがな」


ENFORCER本人が見当たらないので、取り敢えず散策する。近くにテントが有ったが、当然の様に触れる手は擦り抜けている。

やはり、魔術も機械も根本は同じなのだろうと。


「2036.11.9…」

「こっちの日付は2034.4.19。あっちは2035.1.2…」

「電子機器は、全部イカれてると見て間違いないね」

「紙のカレンダー探すか」

「ラジオで良いじゃん」

「…戦争時確かに、ラジオは重宝された。だが、今のこの爆撃の有様からすると、ラジオの放送機器もやられてると見て間違いない。…見ろ」


幾つもの衛星が、その姿を視認できる程近付いている。…これはつまり、衛星機器も動かなくなっている。


「…だが、見覚えがある。中央大戦の時と同じ風景だ」

「中央大戦で、彼女に何かあったの?」

「…それを見付けないと、ここから出られねぇんだろ」

「ゴメンねぇ、分かりきった事を言うのが楽しいからね」


「クソビッチ」

「雑魚童貞」

「水女」

「チキン」

「メスガキ」

「妄想オーガ」

「妖怪ストリッパー」

「アホ」

「ノロマ」

「サイコ」

「ボケ」


「「黙りやがれこの淫乱小兎(性欲爆弾)!!」」


やっぱり、何故か安心する(何故か心地良い)

硝子の曇が(青空の曇が)晴れていく様な感覚。

それは向こうも、同じ筈だ。


俺達は(私達は)()結局(結局)同じ(同じ)ライナーズ(ライアーズ)なんだ(なんだ)()


「…紅雪の処女、か」

「何?今更発情でもした?」

「あの巫女服…。見覚えがあった」

「…ENFORCERの?」

「セレナの故郷に、そんな服があった気がする」


確か本当に神社で使われていた筈だ。つまり、アイツの出生はそこかもしれないな。出生から足取りを追えば、何か分かるかもしれない。


「巫女ってのはね、白を大切にするの」

「アイツの髪も、銀じゃなくて灰色よりだったな」

「他にも、白蛇、純潔、御幣や祝詞にも白って含まれる」

「…白は、神の使いって奴か?」

「対して、白と言うのは昔から災禍の象徴でもある。疫病、敗北、死霊なんかがメジャーかな」 


あの郷は白髪、と言うか全体的に色素が薄かったが、それは遺伝的な問題なのだろう。重要なのは、ENFORCERは白の他にも灰や銀が入っているのだ。仮にアレを巫女だとして仮定する。

巫女としては、白、は許容できるだろう。巫女として重要なモノを妊み、そして人間としてもつ二面性を併せ持てるからな。

だが、灰と銀はどうだろうか。銀は雪や対魔を表す。これは巫女として十分な素質だ。冷たさが残るが、まぁ人と神を繋ぐ仕事だ。仕方がない。

だが、灰は?こちらも、曖昧や雲散など掴みづらい印象を与える。こちらも巫女としては良い素質だ。本体がどうかは察するが。


「…忘れてるね」

「何をだ?」

「彼女の眼は、灰や銀じゃなくて紅。それも、蒼に変色する二面性」


カンフィールド鉱と言うものを聞いた事がある。水性鉱脈の金脈や銅脈、そして銀脈などから産出される鉱物だ。灰に赤味が射した色をして、錆びると青くなる。

そして、物凄く脆い。

アイツを象徴する雪。

それに通じるモノがある。


「…警報か」

「で、行く場所。決まった?」

「郷に行く。多分この時代なら、まだアイツは子供だ」

「んじゃ、行くとしますか」


避難用の電車に登り、春風の焼け野原を進む。

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