白衣
「〜♬」
今日の目覚めは一段と良いらしい。これから絶好調で起こしに来るだろう。いや来る。だが、俺は違う。俺は朝が尋常じゃなく嫌いだ。朝は睡眠から起きる時間。唯一の休息である睡眠が起こされるとなれば、本当に気が狂いそうだ。
「ほら、起〜きて」
「…んん…」
朝から乗っかんないで下さいます?奥様。最近重い…とか言ったら拗そうだからやめよう。てか本当にそろそろヤるぞ貴様。一般的にそれは誘ってるに入――
「どぐっ…」
「起〜き〜て〜!」
このクソアマ、足がッ、肋骨に、入ってるんだよッ、あ。
「…あれ?」
「痛…、ちょっと待ってホントに死にかけたんだけど…」
「良かったじゃん、二度寝しなくて」
「ふざけんなクソアマ」
乗ってるジャックをどかし、服を着替える。ただ着替えてる最中に話しかけてくるのはやめてください。
「朝飯はパンか何かで良いだろ?」
「うん。焼いといて」
「お前も焼けやボケ」
「え〜、それくらいしてよ〜」
「…昼飯選ばせてやんねぇぞ」
「むむむ…」
そんな下らないやり取りを交わし、適当に目玉焼きを作る。パンには目玉焼き&塩派なのだが、最近バターも美味しいと気付き始めた。
「ふぁう…」
「おう、おはよう」
「今日は部屋の掃除だっけ」
「ああ、ついでにお前らの服も買いに行こう。じゃなきゃ永遠と共有になるからな。」
「お昼ってそう言う事ね」
「ただし、高いのは無しだ。給料日は20日。今日は5日。…言いたい事、分かるよな?」
「はいは~い」
「天廻も分かったか?」
「うん」
「じゃ、飯食ったら出発だ!」
「「…」」
そんな感じで無視されたが、無事にショッピングモールにはたどり着いた。
「さて、俺は家具類見るんだが、お前らも来るか?」
「家具よりも服が良いな」
「分かった。金は渡しとこう」
「やった!」
「天廻。ちゃんとジャックについていくんだぞ?」
「分かった」
二人で行動させるのは、あまりよろしくないが…、まぁ、なんとかなるだろう。
「それにしても口数少ないなぁ…。そんなに怖いかね俺」
多分、俺が怖いよりも元々が人見知りなのかも知れないが。あんな暗い所から急にこんな場所に来たら、体の調節も上手くいかないのもあるな。どうにかして、打ち解けたいんだがな…。
「ん、何だこれ」
一際目が着かない場所に、それは有った。少なくとも普通のセンス持ちなら買わないだろう。だが、何故か惹かれる物が有った。
「…しょうがねぇか。買ってってやろ」
無駄な考え巡らせてる内に、買い物を終わらせようと思ったが、そう簡単には終わらないモノだ。結局持つの俺だしな。…一般人なのに。
―一時間後
「よしよし、買う物は全部買ったな」
一時間も放っておいたんだ。流石に服を決めきっているだろう。…いや流石に。そんなに掛かるモノでも無いだろう。
「しかし、女性ってのは服や化粧なんかに物凄く敏感だからな。もしかしてもしかすると終わってないかもしれん」
「君ぃ、情報統括センター行きのバスを教えてくれんかねぇ」
「良いですよ。ホール北から抜けて3番通路の104ってバス停です」
白衣を着て、嗄れた声に、骨張った老人。いかにも怪しい姿をしている。まぁ不審者なら入口で止められるし、教えるだけ教えても良いだろう。だが、どうも好きになれない。と言うか波長が合わない。
「君ぃ、凛くんだねぇ」
「…だったら、何です?」
「神凪はどうしたんだい?」




