15・結婚式は自分らしく・3
「ターナは神様から頼まれて生まれ変わったわけですよね?」
「まぁそうなるね」
「それって何か条件みたいなのがあるものですか」
「あるけど詳しくは話さないよ。話してはダメってわけじゃないけど。結婚して子どもを産む人が増えるといいなって言うのが頼み。具体的な人数を言われたけれど、強制しても良いことなんてないし。元々結婚願望無い人たちが余計に結婚したくないって思っても困るから」
私がそこまで話すとようやくアーセス様の表情が和らいだ。
「そういう、こと、なのですね。私とターナが出会ったことが神様に仕組まれていたのかなって思うと、ターナと結婚することになったのも仕組まれたことかって考えてしまって。それだとなんだか嫌な気持ちになったものですから。条件が厳しくてターナが辛くなってしまって、私との結婚を嫌だって思っても困りますし。ターナが結婚したいと思ってくれたのは、神様との約束だから、という仕方ないもの、と思っていたらどうしようか悩んだのですが」
ああ、そうか。確かに散々断っていたのに、急に受け入れたようなものだったものね。アーセス様が不審に思うのも仕方ないのかもしれない。
「仮にアーセス様の懸念通りだったらどうしていたのですか」
ちょっと気になって尋ねてみる。
アーセス様がニッコリ笑って。
「どうもしませんよ。仕方なく結婚することになったと思われても、ターナと結婚するのは変わらないですからね」
なんかイイ笑顔なのが逆に怖くて、コクコク頷いてしまう。……おかしいな。私、精神年齢的にアーセス様より年上のはずなんだけどな。なんだろう、この威圧感。
「でも、アーセス様との結婚は……仕方ないとは思いましたけど、嫌だってわけじゃないです。アーセス様のことは嫌いではないですし。まぁ結婚したらしたで楽しそうかもしれないなぁって思ってのことです。こうなったら楽しい結婚生活を送りたいなって、そう腹を括りました」
「はらをくくる?」
アーセス様が首を傾げるのでどうやらこちらの世界には無い諺らしい、と気づく。
「前世の言葉で、覚悟を決めるって意味です」
「なるほど。覚悟を決めて結婚するって思ってくれているのですか」
私の説明にアーセス様が決意の強さを感じ取ってくれたように真剣に頷く。
「そりゃあ前世でも結婚したことないですし。アーセス様と結婚するって決めたのなら、添い遂げるつもりでいますし」
「添い遂げる」
アーセス様が目をパチパチと瞬かせて驚く。なんで驚かれているのかしら。
「離婚するのは簡単ですけど、縁あって結婚するわけですから。アーセス様が物凄い浪費家で借金持ちだとか、浮気者だとか、暴力を振るうだとか、そういった人じゃないのなら。話し合いをして上手くやっていきたいですよね。私の話を聞かない人なら考え直しますけど」
「そこまで考えていてくれるとは……思っていませんでした」
意外そうな声音でアーセス様が言う。まぁ流されて結婚を決めたって思っているでしょうからね。流されたのは確かですけど。アーセス様なら結婚してもいいかなぁって思ったことも確かです。
照れ臭いので話を戻しましょう。
「兎に角、そういうわけですから、アーセス様との結婚について思うことは」
ちょっとキツめの物言いをしつつ。
「あと、私たちの親の結婚式も一緒にやる話ですが。検討してください」
アーセス様の顔を見ることが出来ずに視線を逸らしながらお願いしました。
お読みいただきまして、ありがとうございました。




