表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

66/83

11・安易な約束はするもんじゃない・4

 さて。

 約束した……いや、させられたデート当日。デートと言うからには、それなりにオシャレをするべきだと思い、謹慎処分を出していた侍女の謹慎期間も明けたことで彼女に手伝ってもらい、ちょっと裕福な平民のお嬢様スタイルを目指した。あ、ちなみにきちんと反省した侍女をもう一度私付きにするからね、と言ったら泣いて感謝されたのは、まぁ余談。


「アーセス様、お迎えをありがとうございます」


 当日は公爵家に迎えに行きます、と言われたのでおとなしく待ってました。こういう時はお迎えに来てもらうものだ、と貴族世界の常識なのだとか。婚約者じゃないのに? と侍女に確認したら、それでも、だそう。茶会や夜会或いは友人の家に行くとかならば、場所が明確になっているので御者と護衛と侍女とが着いて行って送迎は可能だけど、そうでない場所でさらに男性にデートに誘われたのなら待つのもまたマナーなのだとか。

 貴族、めんどうくさい……。いやでも、今の私はその面倒な貴族に生まれ育ったのだから、ルールやマナーに従う方が余計なトラブルが起きないよね。

 そんなわけでおとなしく待っていると、アーセス様がやって来たので、ハイウェストでサテン生地のリボンがポイントとなるワンピースかつハーフアップスタイルで頭を下げてご挨拶しました。

 ……あら? アーセス様にしては珍しいですね。挨拶が無いわ。普段なら卒なく挨拶してくれるのにどうしたのかしら。

 私が頭を上げると片手で顔を覆って天を仰いでますね。……体調が悪いのかしら。


「アーセス様、体調が悪いのでしたら今日のお出かけは止めますか?」


 私が問いかければ、アーセス様は顔から手を離して、前世のマンガ風にいえば、クワッと目を見開いて「嫌です!」と叫ばれました。……耳が痛い。

 叫べるだけの体力があるみたいなので、体調が悪い可能性は無いのかしら。それからアーセス様は我に返ったように咳払いをして。


「ターナ嬢が可愛らしくて意識が飛んでました。とてもよくお似合いです」


 ……どストレートな褒め言葉に、私の頬は熱いです。絶対、顔が赤くなってるっ。ああ、前世の記憶よ……、私の恋愛経験値はこんなにも低かったんでしたっけ?


「あ、ありがとう、ございます」


 真っ赤になっているだろう私の背後から、侍女が小声で「お嬢様、お礼お礼っ。あとお嬢様も褒めるのは礼儀ですよっ」とアドバイスしてきました。その声に押されるようにお礼を述べて。


「あ、アーセス様も、その、素敵です」


 騎士の正装姿とは違い、シンプルな薄いブルーのシャツにベージュ色のスラックスとジレが背が高いアーセス様に似合っている。というか、顔がイイ人は何を着ても本当によく似合うな。


「ありがとうございます。お世辞でも嬉しいです」


「お世辞じゃなくて、本当に似合ってますよ。騎士服姿もカッコいいですし、以前のラフな格好も似合ってましたが、その、今日の裕福な平民風な姿も似合ってます」


 お世辞に受け取られるなんて心外だ、と慌てて言ってから気づく。……すごく褒め過ぎてませんか、私。アーセス様が驚いたような顔から物凄く緩んだ笑みを浮かべているのを見て、うわぁ……やらかしたぁ……と思って、思わず両手で顔を隠しました。


「お嬢様、そんなことしていて時間が過ぎても仕方ないのでサッサと出かけて下さい」


 背後から侍女が揶揄い口調で言うので、振り返って文句を言おうとしたら、ニコニコニコニコしているお母様と目が合ってしまった……。お父様は仕事だけど、お母様がいつの間にか玄関まで来ていたことに気付かなくて、居た堪れなくなって、アーセス様に「い、行きましょう」と促しました。

 うう……恥ずかしい。

お読みいただきまして、ありがとうございました。


ターナに恋愛方面は無い予定だったのですが、なんだか恋愛の雰囲気が出て来ていて、アレ? と首を傾げる作者です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ