11・安易な約束はするもんじゃない・2
とはいえ、本当のことを話すのもどうかと思うから、さてどうしよう。
ちょっとはぐらかす方向でいいかな。
「確かにお父様は仕事に厳しい方です。成功するかどうかも分からない仕事に簡単に許可を出すことはありません。ですが、お母様にはとことん甘い方でして。お母様にお願いしてお父様を説得したらお父様はオッケーしてくれたんです。試してみたらいいと、お母様効果絶大ですね」
実際、父が母を溺愛しているのは、我が家でプレ婚活パーティーした時に目撃した方々の口から噂として広まっている。……そういえば、あのパーティーで恋人になった人たちも居て、それぞれ順調に交際しているんだよね。……っていうか、え、我が公爵家で開いたプレ婚活パーティーからまだ一年も経ってないの? 嘘でしょ?
いや、でもそうなるのか。お母様の妊娠が分かったのはその後だし。まだ弟産まれてないし。
あれ、ということは。あのプレ婚活パーティーで恋人成立した何組かがこれから結婚することもあり得るんだよね? そうだよね?
そういえば、この前のミャルカの結婚式をその人たちも招待してたな私。その後のことは何も聞いてないから忘れてたけど。……手紙出してみるかな。結婚式を見て結婚したいって思ってくれた恋人たちが居たら、かなりいいよね?
「ああ、なんでも夫婦仲が冷え切っていたように見えた公爵夫妻が実はそんなことは無かったとか」
アーセス様の声で我に返り、ええ、と特大の猫を被ったまま頷く。
いや確かに冷え切ってたというか、すれ違いまくってた二人だったからね、あの夫婦。
思ったことは言葉にしましょうってお父様とお母様に説教したのも今となっては良い思い出だ。
我が家の使用人たちにバレバレの二人の気持ち。とうの二人が気付かないとか、どこの思春期の子どもだよって内心ツッコミまくりだったもんなぁ。
親の恋愛なんて見る機会が出来るとは思いもしなかった。……いや、ある意味面白い経験だったわ。さすがに前世の私でもそんな経験したこと無かったもんね。
でも会話が圧倒的に足りない夫婦だから説教したことは間違いないけど、今は寧ろ恋人同士というか荒んだ新婚生活をやり直しているようにラブラブしていて逆に面倒な夫婦だわ。
執事とか侍女長とか、最初は気持ちが通じ合って良かった良かった、お嬢様ありがとうございます。って雰囲気だったのに、今となっては……。
「お嬢様、あの空気何とかしてくれません?」
とか侍女長がタメ口で文句を言ってくるレベルに仕上がってるもんなぁ……。仕方なくお父様にいい加減にしとけって何回言ったか。
……つうか、あの夫婦私が娘ってこと忘れてないか? 娘の前でイチャイチャして……とかじゃなくて、これから生まれてくる弟のことしか頭に無いような気がするんだけど。
あ、でもお母様は私が仕事から帰ると労ってくれるし話を聞こうとしてくれるから……やっぱりあのオトウサマがオカシイだけか。あれ絶対、私のこと忘れてお母様のことだけだよね頭の中。偶に家に居て私に会うと、いたのかって顔するし。
うん、決めた。
お母様にチクってやろう。
そんでお母様に娘を忘れるとはなんですかって偶には叱られればいいよ。
そんなことを思い出しながら、私はアーセス様がまだ何か考えている様子なのを見て、早くこの話題から逸れないかなぁ……とヤキモキしていた。
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